
国会図書館の中に「山口組」があったのをご存じだろうか。
女性史の年表として画期的な『日本婦人問題資料集成』第10巻「近代日本婦人問題年表」が1980年にドメス出版から刊行されている。今も欠かせない女性史研究の基礎資料で、作成したのは、当時、国会図書館の職員だった7人の女性。日常業務をこなしながらのサイドワークで、5年余の歳月をかけ綿密な年表に仕上げた。彼女たちを率いたのが、丸岡秀子と共同編者の山口美代子さんで、人呼んで「山口組」という。
山口さんは、33年余の国会図書館在職中に、いくつもの貴重な仕事を任されている。一つは政治家の証言を録音テープに収め後世に伝える「政治談話録音」で、女性政治家では唯一の市川房枝を担当。90年には、「議会開設百年記念議会政治展、特別展示・女性と政治―平等へのあゆみ」にも取り組んだ。女性の政治参加をテーマにした国会図書館では初めての特別展で大きな反響があった。
図書館を退職し、2019年に90歳で亡くなるまでは、各地の女性センターなどの蔵書構成や目録作りなどに携わりながら、市川房枝記念会の膨大な婦人参政関係史資料の整理作業をライフワークにした。「山口組」をはじめ、彼女を慕う後輩たちがボランティアで関わり、同会の資料群は女性史研究の宝庫である。
山口さんの仕事を貫くキーワードは「資料と女性」で、とかくなおざりにされてきた女性問題資料に光をあてた功績は大きい。そのライブラリアンとして、アーキビストとしての生涯と仕事を一望できるように編んだのが本書で、詳細な年譜と著作目録も付した。
書名の『m・yの軌跡』は、Miyoko Yamaguchiのイニシャルで、表紙デザインは綿貫宏介。山口さんからの聞き取りを資料で補いながら「山口美代子聞き書きの会」メンバーが共同執筆した。「山口組」の枝松栄、エディターの矢野操と生方孝子、女性史研究の江刺昭子の4人である。頒価は1000円、お問いあわせは以下に。
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