未曾有の原発事故が発生し、高線量が測定されても避難しない人、戻る人がいる現実がある。
そんな人がいるから私たち避難者が否定されるのだ!
・・・失礼ながらそう思ったこともあった。
一方で、一時的な避難はできても、移住のハードルは高いということを身をもって知っていた。
湧き上がる二つの感情をうまく説明できずにもがいていたとき、私は一つの素晴らしいドキュメンタリーに遭遇した。
それは2011年8月、E TVにて放映された「私にとっての「3・11」―フクシマを歩いて―」という番組だった。
東京経済大学で教鞭を執る徐京植さんという在日の作家が、原発事故による被災者の苦悩を「根こぎ」という言葉で見事に言語化してくれたのだった。
「根こぎ」とは、土深く根を張っている植物を暴力的に抜いてしまうこと。
植物を根っこごと一気に抜いてしまえば、やがて枯れてしまう・・・
それが原発事故による放射能汚染でも行われていると・・・
その根っこもろとも一気に引き抜かれた人間の痛み・・・
それを数量化したり、物量化するだけの現状に一石を投じていたのだった。
私は昨年末より、オンラインミーティング「カタリバ『Zoom Cafe い・ろ・り』」を主催している。
「カタリバ『Zoom Cafe い・ろ・り』」は、コロナ渦の今こそ人びとの繋がりの場が必要な場所ではないのか?
そんな思いから、福島の原発事故避難者問題を軸に、日々の出来事や、人々の交流を図り、大切なことを次世代へ伝えていく場として始めた。
ナビゲーターは福島の原発事故避難当事者の私が担当。
毎月11日、これまで3回ほど開催し、その都度、メインテーマを決め、定員を10名に絞ったことにより、一人のスピーカーの話をただ聞くのみならず、参加者おひとりおひとりと対話できる形式にしていることで、好評を得ている。
そんな中、発災から10年目にして司法に訴える人々が出てきた。
事故のあった原発から40キロ以上も離れていたにもかかわらず、超高線量をたたき出した飯舘村の人々である!
訴訟団の名前は「謝れ!償(まや)え!かえせふるさと飯舘村」損害賠償請求訴訟。
原告の菅野さんは、
「長期的汚染の状況を作り出し、事故を起こした責任を認めていない東電と、国策として行ってきた国の責任を質したい」
「原発事故が起きないという保障はどこにも存在せず、二度と原発事故は起きて欲しくない。被ばくする悲劇は起きて欲しくない」
と提訴を決めた。
美しい飯館村から「根こぎ」をされた彼らの悲痛な叫び・・・
すでに高裁判決も多数出る中での提訴の意味は大きく、ぜひ、ご注目いただきたい。
そして今日311は、鎮魂の祈りとともに、原発事故避難当事者の話に耳を傾ける日としていただけたら嬉しい。