「ある性格があなたの寿命を左右する」と言われたら信じますか? 脳神経科学者で認知心理学者の著者は、性格診断の世界標準である5因子「ビッグファイブ」のうち、寿命と相関関係が最も大きいのは「誠実性」だと言います。「誠実性」が高い人は、責任感があり、注意深く、実務能力が高いのですが、高齢者は若者に比べて誠実性が高い傾向があるので、歳を重ねることの利点のひとつと指摘します。
脳の健康を保つためには運動が欠かせないのは、もはや常識となりつつありますが、著者は、そのためにハードなトレーニングは必要なく、少しの身体活動で十分と言います。特に、シナプスを強化し海馬の記憶システムを活性化するには、山道のような凸凹で不確定要素いっぱいの道を歩くのがよいと述べています。
また、著者は、今流行りのほとんどのダイエット法(低炭水化物、ケトなどを含め)は、その効果が科学的に実証されていないと述べます。なぜなら、それらの方法では対照実験(全く同じ条件でダイエット法実践有り無しのグループを比較する実験)が行われていないからです。
著者は、4000本以上の科学論文(その大半はメタ分析論文)を参照し、上記のような心身の健康を維持し健康寿命を延ばすための解決策と最新情報を、本書にまとめました。性格、記憶、五感、感情、社交性といった要因と脳機能の関係から、体のリズム、食事、運動、睡眠に関する老化の原因とその予防方法・改善方法、さらには、長寿を実現する仕組み、認知機能の強化方法、より幸せな後半生について、最新科学の知見を具体例とともに明らかにしています。
本書は、高齢期を「第3の成長ステージ」として捉えています。高齢期は、体力が衰える代わりに、誠実性や寛容性が高まり、貴重な経験が増えます。著者は、健康寿命を延ばし、高齢期を充実させるために、科学的エビデンスに基づく知見を活用する提案をしているのです。そして、健康寿命を延ばすために行動を起こすのは遅すぎることは決してないと主張しています。
体や脳の健康がちょっと気になり始めた40代、50代の方から、日々老化を感じている60~80代、さらには90代の方まで、今日から実践していただける健康寿命を延ばす方法やヒントが詰まった一冊です。
◆書誌データ
書名 :サクセスフル・エイジング 老いない人生の作り方
著者名:ダニエル・J・レヴィティン
翻訳者:俵 晶子
頁数 :478頁
出版社:アルク
刊行日:2021/03/26
定価 :1980円(税込)