2011.01.17 Mon
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本書が具体的に反証しようとしていることは、「ポルノに被害者はいない」という一般的な通念であり、ポルノグラフィを規制することは「表現の自由」を侵害し許されない、という信念である。そうした理解とは異なり、ポルノグラフィは、主に成人の女性や子どもに広範にかつ深刻な被害を生んでいる現代の性暴力の1つである、したがって公的な規制が必要だし可能だ──こうしたことを明らかにするのが、本書のねらいである。
本書は、研究者、医師、福祉施設職員、その他の職業を持つ20名以上の執筆者の手になるが、最も特筆すべきことは、女性や子どもの福祉施設に勤める支援者が多数執筆していることであろう。その支援者らが、女性や子どもへの支援業務から日常的に見聞きしたポルノグラフィや売買春のもたらしている具体的な被害について書いている。
本書が生み出された背景には、ポルノグラフィの具体的な被害を実証しようと10年にわたり努力を重ねてきた研究会のメンバーと、売春防止法とDV防止法に根拠をおく婦人保護施設の職員との出会いがある。婦人保護施設の職員は、売買春(しばしばポルノを含む)やDVによる虐待(しばしば性的な)によって心身を傷つけられた女性の保護に携わる専門職にほかならない。
両者の出会いにより、「ポルノは被害者のいる性暴力である」という「理論」が「現場」により実証され、売買春・ポルノの被害者をケアしている「現場」が「理論」により体系化される驚きを、互いに抱いた。そこから、本書が構想された。
幅広い執筆陣は、ポルノ(そして売買春)問題に、総合的にアプローチすることを可能にした。ポルノが具体的な被害者のいる性暴力なら、被害の防止と救済のために法規制が不可欠だ(ちょうどDV被害の防止と救済に法規制が必要なように)。ポルノに対する法規制を、従来のものから「人権」を基礎におくアプローチに刷新することが本書では提唱されている。
しかし、法規制「だけ」では問題は解決しない。だれもがすぐに思いつくように、「福祉」と「教育」が合わせて議論されなければならない(ちょうどDVについても「法」とセットで「福祉」と「教育」を議論しないといけないように)。本書にはその両方──前者は近年の「貧困」問題とからめて──の議論が含まれている。
ポルノは、現代の情報技術(IT)革新と手を携えて増殖している。現代のポルノ規制には、ITに精通した技術的な議論も不可欠だが、この点もカバーしている。
そして最後に、ポルノ・売買春によってトラウマティックな被害を受けた被害者の回復をめざす治療の問題がある。それについても1章が割かれている。
他に類書のない、しかしきわめて今日的なテーマを扱う著書である。ぜひ多くの人々に読んでいただきたい。
(共著者 中里見 博)
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