ジュニアプロジェクトは、昨年度、法人窓口に届いた中学・高校生からの、さまざまな問い合わせから生まれたプロジェクトです。
 若い方達からの問い合わせの急上昇に、私たち「おとな」にできる切っ掛け作りを提案しました。

「おとな」ができることとは何か?

 目の前に居る若い人たちが、自分の頭で考え、アクションを起こし、ネットワークをつくり、将来にわたってのびのびと生き延びるために、どんなサポートができるかを考え、実践して来られた、ある高校の先生から、【私が高校で「女性学」を始めた理由】という、アクションコメントを寄せていただきました。

 7回にわたって、毎週水曜日にアップしますので、楽しみにお待ち下さい。

【私が高校で「女性学」を始めた理由】No.1 ・・・ by M・T

*絶滅の危機に瀕した県立女子高校でのチャレンジ*
                          2018年秋 T女子高校(通称K女) 着任1年目

 生徒たちには、『女性としてこうあるべき』という古い社会通念に縛られることなく、自分の人生を自分で選択して生きてほしい。そんな願いから、私はある県立の女子高校で「女性学」を始める準備を進めていた。2018年の秋のことである。

 「県立なのに女子高?」特に関東から離れた場所にお住まいの方は不思議に思うのではないだろうか。おそらく現在では、県立の別学高校というものは、S県、T県、G県の3県にだけに存在すると思う。(もし、この3県以外の場所で存在していたらご容赦ください)しかし、G県においても少子化の影響による生徒数現象の流れには逆らえず、近年、伝統ある女子校と男子校の統合がいくつか行われた。残る別学はそれぞれ6校ずつというところであろうか。絶滅の危機に瀕した校種である。(笑)
 別学云々については色々とご意見をお持ちの方もいらっしゃると思うが、その話はここでは置かせていただくこととして、「この稀な状態であることを生かして、ここでしかできない面白いことができるかも!」と考えたのである。存在しているのであれば、その存在している価値を最大に生かそうと。当時勤務していたT女子高校(以下、K女※音読みするとKになります)の生徒は、「とても素直」「ちょっと控えめ」「言われたことはきちんと出来る」から授業はやりやすく、学校は日々平穏な時間が流れていた。進路状況においては、100年を超える伝統校らしく、長年のお付き合いから私立大学から十分な指定校推薦をいただいていて、「無理をしなくても無難に決定できる」状況であった。また、東京にもそこそこ近いことで、「家を出なくても通える東京の大学」に決める生徒も多かった。私が察するところ、保護者もまた「女の子だから無理して難しいところを狙わなくても」「女の子だから家から通えるところで」とお考えの方も少なくなかったように思う。何事に対しても一生懸命に取り組み、学力が高い生徒もいたので、教員たちは、「もっと欲を出してチャレンジしてもよいのではないか。」と、ジレンマを感じているところがあった。

 そんなときに、教務主任から「来年度の入学生から『総合的な学習の時間』が『総合的な探究の時間』に変わります。今まで通りの内容というわけにはいかないですよね?」と相談を持ちかけられたのである。「これだ!」と頭の中に電球の絵文字がピカッと浮かんだ。それまでのK女の『総合的な学習の時間』のテーマは「生き方探究」であった。これを「女性の生き方探究」に変えて、生徒が『女性としてこうあるべき』に縛られることなく、自由に自分の道を選ぶための教育をトコトンしようと考えたのである。女子校でしかできない、別学であることを最大限に生かした取組ではないだろうか!私の心は踊った!G県に県立女子校が残っていて良かった。(笑)

 幸いなことに、私がK女に着任する直前、校務分掌の中に「探究係」が組織されていた。教頭の私、教務主任、探究係3名、偶然であるが全員女性であった。誰一人「女性学」を専門的に学んだ者はおらず、あくまでも高校の「総合的な探究の時間」で行われる独自の「女性学」であるので、研究機関等において学術的な「女性学」を研究されている方々に申し訳ないと思い、区別するために「K女の」と付けることにした。SDGsのゴール5「ジェンダー平等」を基礎として学び、その視点を踏まえながら他のゴールについて考えるという点が、「K女の女性学」の特徴である。素人集団ではあるが、「女性学」プロジェクトメンバーの心は、希望に燃えていた。