
*新プロジェクトを始める際の絶対条件*
「シタタカ」とはおそらく「強か」のことだろう。本来は褒め言葉とされていたのかもしれないが、現在はちょっと違う。「ずるい」とか「計算高い」とかニュアンスとしてはマイナスイメージを抱かせるのに十分な言葉であるが、そんなことはどうでもよかった。この担当チーフはきっと嘘をつけない正直な人間なのだ。新年度早々に校長室に訪ねてきてくれて本当に良かったと思う。
何か新しいことを始めるときに、突っ走る人材は非常に貴重な存在だ。最近では、学校現場でもなかなか少ない。そして、彼は単に突っ走るだけでなく、ICTにも長けていた。そして、立て込んだ状況や不測の事態に陥ったとしても決してイライラしない。
K女のときもそうであったが、プロジェクトを始めるときの最重要条件は「人材が揃っているか」である。とにかく直ぐに行動に移す突っ走ってくれる人、創造的・独創的なセンスを持ったクリエイティブな人、地道にコツコツ事務的な仕事が得意な人、多様な人材が集まるいいチームができると、そのプロジェクトはほぼ成功したと言ってもいい。特にクリエイティブ人間は次々と新しいアイディアを生み出してくれて最強だ。
そして、1番大切なことは、そのメンバーたちが、プロジェクトについて「やりたい!おもしろい!」と思っているかどうか、そしてイライラする人物がいないことである。本当にラッキーであったと思うのであるが、K女にしてもO高校にしてもこれらの条件がバッチリ揃ったのである。
立ち上げのきっかけを作った自称「突っ走る男」は、2021年3月にO高校を去って行った。彼がアクションを起こして始まった「SDGsみらい探究」は、多様性のある社会の実現を目指した取組が注目され、新聞、テレビ等で幾度となく取り上げていただき、県内で広く知られることとなった。
*風をよむ*
私がプロジェクトを立ち上げる上でもう1つ大切にしていることは、「風をよむ」ことである。物事を軌道に乗せるためのグッドタイミングを逃さないようにすることは大切だ。これからどんな風がどちらに吹くか…世界の動きや国内の情勢を見ながら風をよみ、そのときをじっと待つ。風が吹く気配が全くないときは様子を見た方がよい。決して無理をして職員の負担になるようなプロジェクトでは元も子もない。まして逆風が吹くであろうと思われるときは絶対に無理に始めるべきではないと思う。学校現場においては、個人的な志向や直感だけで動くことは避け、その時の学校の状態、周囲の環境や社会情勢等を見ながら推理・分析的な考察のもとに起動することが大切であるように思う。決して焦ってはいけない。いつか必ず風は吹く。
私がO高校に着任した2020年4月はすでに風は吹いていた。選択的夫婦別姓の導入についても改めて議論が活発化していたし、女性差別の医学部入試問題、また、女子大学のトランスジェンダー受け入れ、パートナーシップ制度等、様々なジェンダーに関する問題が話題になっていた。ジェンダーに関する社会の課題について、生徒に考えさせるのには、いいタイミングであったと言えよう。
また、高等学校においては、令和4年度からの新学習指導要領の実施を控え、探究的な学びの導入が進められていた。特に「総合的な探究の時間」については、すでに先行実施されており、社会の課題に気付き、解決に向けて主体的に考える学びが重視されていた。
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