「おとなの女」の自己教育思想 ー国立市公民館女性問題学習・保育室活動を中心に

著者:村田晶子

社会評論社( 2021/08/12 )


 本書の目的は、女性差別を克服しだれもがその人権を保障され豊かな人間性を育てることができる社会を構築する「おとなの女」の自己教育のあり方を明らかにすることです。 それは、一人ひとりの自己を育てる豊かな学びとそれを支える〈学び合うコミュニティ〉の形成、そこで探求された自己教育の組織化のあり方を明らかにすることでもあります。
 取り上げた学習実践は、国立市公民館における女性問題学習・保育室活動です。1965年から続き、膨大な学習実践記録が書かれています。『主婦とおんな』、『子どもからの自立』などをかつて読まれた方々には、この学習の総体を知っていただきたいと思います。新自由主義が横行する中で、女性たちが子育てか自分の人生か二者択一を迫られているような社会の価値観を根底から問い直し、つくり変えていく学習論、自己教育論を提起しています。この学習実践から多く学びたいと思います。
〈目次〉は以下の通りです。
序論
第Ⅰ部 女性問題学習実践研究の問題構成
第1章 社会教育実践分析研究と学習過程研究の課題
第2章 女性問題学習実践の研究視点と方法
第Ⅱ部 国立市公民館女性問題学習・保育室活動の実践研究
第1章 「おとなの女」と学習を考える視点  -『子どもからの自立 おとなの女が学ぶということ』( 一九七五年)
第2章 「おとなの女」の学びという問い 
    -『主婦とおんな 国立市公民館市民大学セミナーの記録』    (一九七三年)
第3章 公民館保育室活動と学習の組織化 
    -『子どもをあずける 子どもを育てながら自分を育てるた めに』(一九七九年)
第4章 女性問題の克服と「保育室だより」の学び方
    -『子どもを育て自分を育てる 国立市公民館「保育室だより」の実践』(一九八五年)
第5章 学習を組織する社会教育職員の専門性
    -女性問題学習における社会教育職員の実践を通して―
第6章 「おとなの女」の自己教育思想  
   -「私たちの女性問題学習」における共同の省察―「問題提起 公民館活動としての女性問題学習のあり方について」  
  ・「実践記録集 国立市公民館における女性問題学習」(一九九三年)
第7章 公共性を問う女性問題学習  
   -「学習としての託児―くにたち公民館保育室活動」(二〇一三年)
    ・「学習としての託児―くにたち公民館保育室活動」(二〇一四年)
結論 実践と省察を架橋する社会教育学研究