この年末も女性による女性のための相談会が開かれました。今までの年末の年越し村などでは男性スタッフが多くて、男性の相談員には相談しにくいという女性の声が上がってきて、今年の3月に初めて女性だけの相談会が開かれました。初日は大雨という悪天候にもかかわらず、2日間で120名もの相談者が訪れました。その同じ実行委員会が12月25日と26日に、3月と同じ新宿歌舞伎町のすぐ近くの大久保公園で開いたのです。

 天気予報は2,3日前から、数年に一度の寒気が上空を襲うと盛んに伝えていました。日本海側や北海道は大雪の知らせでした。予報は的中して、雪こそ降らないものの、北風が容赦なく吹き付ける公園にテントを張りめぐらしての相談会でした。

 以下は、わたしが参加した26日、目にし耳にしたことごと、そして実行委員会のまとめの一部です。スキーウエアにスキー帽、スノーブーツという最高の装備で出かけましたが、それでも寒さがおなかまで沁みる寒い一日でした。

 好奇心で撮影に来るメディアなどから守るために、テントの中は外から見えないように厳重にシートが張りめぐらされています。スタッフが足早に出入りするその小さな入り口から、おずおずと不安げに入ってくるのが相談者です。仕事を失った、寝るところがない、夫のDVから逃げているといったそれぞれの困窮を訴えてくる人たちに、まず温かい飲み物をお出しして一息ついてもらいます。弁護士やカウンセラー、労働問題に詳しい相談員などがそれぞれのテントで応じます。各テントの机の上には花が飾られ、中には丸いストーブが1個置かれています。相談が終わると、マルシェコーナーに行きます。ここには、衣類や、生理用品・化粧品などの日用品、大根・イモ・コメなどの食料品や、切り花・小さな花の株などなど各地の農家や企業からの寄贈品、それぞれが持ち寄った小物や子供の本などなどがうずたかく積まれています。相談に来た女性たちは、その物資の中から必要なものを大きな袋に一杯詰め込んで、重そうに背負いながら帰っていきます。さっき入ってきた時とは違って、少し元気になってスタッフに見送られながら同じテントの入口を出ていきます。

 2日間で170人を超える方が相談に来られました。その相談のいくつかの例です。
[1] 勤めていた会社が突然倒産した。経営側が突然倒産を決めて、退職者に退職金として数万円が支給されただけ。失業保険を受けているが、もうすぐ期限がくる。再就職のため職業訓練を受けている。
[2] 夫が病気で失職、在宅で機嫌が悪い。家のことをせず、賭け事で金を使ってしまう。
[3] 子どもに発達障害があり面倒を見る必要がある。同居している両親は協力してくれない。自分だけに負担があって辛い。
[4] 自営業だがコロナで休業を余儀なくされた。休業給付金の支給を希望しているが、「条件を満たしていない、支給できない」と行政に言われた。要件を確認したい。
[5] 30代。食料がない。ゲストハウスに住んでいる。数年前に大卒で正社員だったがクビになり、コンビニ等のアルバイトで食いつないでいたが、時給が安く、生活が成り立たない。食べていくことができない。着る服もなく、物資が欲しい。
[6] フリーランス。海外からの顧客向けの仕事がコロナで失った。子どもがいて就職活動が難しく、子育てしながらの就職が難しい。新規支援制度がこの先あるかどうかも不明。それが知りたくて相談に来た。
[7] 30代。ネットカフェ、ゲストハウスに居住。無職。3、4年前、コールセンターの日雇いが、会社都合で打ち切りに。仕事が欲しい。
[8] 30代。子供の体が弱い。自身も障害者で、子供の面倒を見るため働けない。

 男性でも、コロナで職を失った人は多いです。でも、職を失う率が女性の方が高い。それは非正規雇用が男性20%に対して女性は50%を超えているという、女性の働き方の不安定さと比例しているから。しかも多くの男性は失業しても自分のことだけ考えていればすむけれど、女性はそうはいかない。子育てもある、体の弱い子どももいる、夫の暴力もある、複雑な問題の絡み合いの中で失業に立ち向かわなければいけないのです。

 女性は、今まで、自分の蒔いた種だ我慢しろ、耐えているのが美徳だ、など旧来の価値観に縛られてきました。それが、コロナ禍で女性にしわ寄せが行っていることが世間にも認められてきました。やっと困ったと言えるようになりました。ついに決心して寒空の中を満足な防寒着も着られないままやってきたのです。

 マルシェ係はこう言っています。「会場に来る相談者は、ウインドブレーカーに、ブラウスなど薄手のものを重ね着しているだけの薄着の人が多くて、コートを求める人が10人以上いました。その場で着て、サイズが合えばそのまま着て帰りました」と。この寒気の中、ウインドブレーカーでは風も防いでくれません。

 また受付け係は「ほとんどの相談者は手袋をしていません。手があかぎれしていて、アルコール消毒が『染みる』と嫌がられます。検温をしても体温数値が低く出ます。日ごろ低体温になっているのではないでしょうか」と、見ています。いまどき若い人には「あかぎれ」など死語でしょう。低体温になっているというのも恐ろしい現実です。

 全く役に立たないマスクを何億枚も作った元首相、それを保管費用がかかるから年度内に廃棄して厄介払いをするという現首相、私たち国民の税金の壮大な無駄遣いをして平気でいる為政者たちに、ネットカフェで夜を過ごし、あかぎれに悩み、薄手のウインドブレーカーで寒さに震えている女性たちの姿を見に来てもらいたい。 これこそ、政治の貧困以外の何物でもない日本の歳末の実景なのです。

(相談会は1月8日、9日も同じ場所で開かれます。お困りの方にお知らせください)