いつものように毎年、師走は忙しい。
12月29日、京都四条のタベルト、三条の八百一、寺町三条の三嶋亭に、おせち料理の材料を娘と二人で買いに走る。
数の子、鯛の子、海老、昆布巻き、蒲鉾、蛤、伊達巻き、厚焼き卵、ゴマメ、甘柿、甘栗、金時芋。お雑煮用の小大根と子芋と白味噌。筑前煮用の鶏と蓮根、牛蒡、金時人参、こんにゃく。ハムとチーズ。お出汁用の利尻昆布と削り鰹。香りに柚子と橙。そして三嶋亭の牛肉。あとはお酒少々と和菓子を買って5人分を用意する。材料費のみ。
12月30日は、おせちづくり三昧。お米屋さんに小餅50個を受け取りにいく。数の子と鯛の子と筑前煮は時間をかけて味を染み込ませ、頭つきの海老を煮込み、牛肉とこんにゃくの甘辛煮はからりと仕上げて。ゴマメは半紙で煎って砂糖と醤油とお酒で香ばしくからめる。口直しの、おなますは義母ゆずりの古い木製の鬼おろしで大根と金時人参を削ぎ、甘柿と柚子の皮を刻んで橙を少し絞って紅白の彩りをつける。タタキ牛蒡に胡麻をまぶして。金時芋と甘栗にくちなしの実を入れて、黄金色の栗きんとんをラップで丸く包んで結ぶ。
大晦日は、みぞれまじりの寒い日。お重を何段も重ねて千両の小枝を添えてできあがり。ニシンそばの年越しそばをつくって、ようやく新年を迎える。ああ、疲れたあ。

清水の舞台
元旦は、いいお天気になった。京風白味噌仕立てのお雑煮とおせち料理をいただいた後、娘と孫娘は元夫の家へお年始に出かけ、私はお留守番で後片付けの後、待ち合わせて八坂神社と清水寺へ向かう。
恒例の長楽館でガレット・デ・ロアとモンブランをちょうだいして、50年ぶりの大改装を終えた清水の舞台へ。石段をどんどん下って音羽の瀧をめぐり、三寧坂、二寧坂を降りて八坂神社から家にたどり着くと、歩数計は2万歩を超えていた。
2日は初売りのお買い物へ。5年生の孫の背丈がグンと伸びたので、服を新しく買い求める。夕方は囲炉裏のある男友だちの部屋におせちを運んで叔母と共に、みんなで御馳走をいただく。「囲炉裏は、あったくて、よかなあ」といって手をかざしていた母は去年6月、97歳と9カ月で亡くなった。94歳の叔母は元気で、よく食べてくれるのでホッとひと安心。

興福寺中金堂
3日は久方ぶりの奈良へ。近鉄奈良駅から東向商店街を抜けて興福寺へ向かう。藤原氏の氏寺として和銅3年(710年)、平城遷都とともに創建されたお寺だ。五重の塔、中金堂、東金堂の仏像を仰ぎ見る。躍動感のある、今にも動きだしそうな国宝・木造四天王立像(中金堂)、国宝・木造十二神将立像(東金堂)が、見ていて楽しい。
鹿がたむろする奈良公園を横切り、氷室神社で氷柱に浸すと文字が浮かび上がるおみくじを引いたら「大吉」と出て、孫は大喜び。
さらに東へ春日大社の長い、長い参道を登ってようやくたどりつくと、初詣の人々でいっぱい。
若草山麓をめぐって二月堂から東大寺へ。金堂の大仏殿で盧遮那大仏(本尊)を見上げる。小学校の遠足の時も「大きいなあ」と首を伸ばして見たけれど、像高が15メートルもあるんだと知って、びっくり。

春日大社

東大寺金堂大仏殿
そこから奈良ホテルまで歩いて猿沢池をめぐり、ならまちあたりを散策して、夕刻、近鉄特急で京都へ戻る。この日は2万5千歩近くも歩いたんだ。さすがに、くたびれたぁ。
大学入試の科目に世界史と人文地理を選んだせいか、どうも私、日本史に弱い。なぜ桓武天皇は、平城京から平安京に遷都したのだろうか。孫がもっている角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』を読んでも、よくわからない。私は、マンガが苦手なのだ。
710年の平城京遷都後、奈良時代後半になると、道鏡をはじめ仏教勢力が力をもち始めたことを懸念した桓武天皇は、天武天皇系から天智天皇系統に戻して新しい朝廷政治を確立しようとの考えから、784年に長岡京に遷都。その後、暗殺や不幸な事件が続き、10年後の794年、平安京へ遷都する。
平安京は、中央に大内裏を配し、東西南北に道を渡した碁盤状に区画された都市。その町並みは唐の都・長安を模したとされる。
その後、平安時代は400年続き、鎌倉に幕府が置かれた後も、戦国時代を経て、江戸時代の終わりまで、京都に朝廷が置かれ、明治維新を経て、1869年(明治2年)の東京遷都まで、京都は千年の都として続くことになる。
それにしても歴史というのは、なぜこんなに政権争いや戦いばかりが続くのだろうか。しかも肉親の争いも絶えることなく。人間の欲望にはキリがないということなのか。今も変わらず、争いは続いているのかもしれないが。
そして4日と5日は、近くの亀岡の湯の花温泉へ叔母と娘と孫と4人で行く。あったかいお湯と、おいしいお料理を堪能して復活。京都府の割引クーポンもあって割安の旅ができた。
7日は七草粥で、おなかも一休み。仕事始めにパソコン業務を何本か仕上げて、そろそろお正月も、おしまいかな。

伊吹山

盆梅展(慶雲館)
それにしても今年の冬は寒い。三連休の9日、長浜まで出かけたら、伊吹山が見えるあたりから車窓の外の景色は一面の残雪。長浜も、晴れているのに道端に雪が溶けずに山積みになっていた。
長浜は黒壁ガラス館のほか、まちづくりが成功してアーティストたちの作品が色とりどりに並んでいる。東京の友人も、米原経由の日帰りで何度も遊びにくるという。孫は吹きガラス体験に挑戦。1300℃の坩堝(るつぼ)で溶かしたガラスを細工して形を整え、緊張しながらマイカップを仕上げて楽しんでいた。
その後、円山応挙の襖絵がある真宗大谷派長浜別院大通寺を見学して、「うらくろ通り」をぶらぶら歩いて一服。
さあ、帰ろうと駅に向かったら、ちょうど長浜盆梅展の初日と知って、駅近くの慶雲館を訪ねる。高さ3メートルの巨木や樹齢400年ものの古木もあり、縁側沿いに紅白の盆梅が、庭の雪景色を背景に見事に飾られていた。
というわけで、忙しかったお正月も、これでおしまい。
今年も、いや今年こそは、どうぞ、よい年になりますように。
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