私たち全国保険医団体連合会は、国内の医師・歯科医師10万7000人で構成する団体です。
 2022年1月17日、女性差別のない公正な医学部入学試験の実施を求める声明を発表し、文部科学大臣、全国医学部長病院長会議、およびマスコミに送付しました。

 これを受け、全国医学部長病院長会議では会長はじめ関係委員会長で協議の上、会員医学部長に声明を転送し、女性差別のない入学試験を実施するよう周知していただいたそうです。

 当会女性部は、女性医師・歯科医師の働く環境改善に向けて活動してきました。入試差別が発覚した際、「女性医師が増えると(産休・育休・時短勤務が増えて)現場が回らない」という声がありました。この背景には、医師の過酷な働き方に加え、根強い性別役割分業意識があります。
 女性ばかりに家事・育児・介護の負担がのしかかる状況では、女性医師は過労死ラインを超える仕事と家事・育児・介護の二重負担に耐えるか、「男並みの仕事ができない」という評価に甘んじるかの悪しき二者択一になってしまいます。

 私たちは、男女ともに人間らしく働ける医療現場の実現を目指して、医師数の増員と、医療界の性別役割分業意識の解消に向けて、引き続き取り組んでいきたいと思います。

(以下、声明の内容)
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今月中旬から全国の大学が入学試験シーズンを迎える。私たち保団連女性部は、医師を志し勉学に励む女性受験生の努力が裏切られることのないよう、女性差別のない公正な入試の実施を全国の大学医学部・医科大学に強く求める。

2018 年に医学部入試での女性受験生差別が明るみに出て以来、保団連女性部は、再発防止のため、全医学部・医科大学の男女別合格率を公表するよう求めてきた。

文科省は18 年9 月に13 年度から18 年度の全医学部・医科大学の男女別合格率を公表した後、不正が発覚した大学以外は男女別合格率を公表しないとの考えを示していた。しかし20 年12 月に一転して19 年度と20 年度入試分の公表に踏み切り、次年度以降も毎年公表することを決めた。21 年度入試分も、既に公表されている。
これらのデータをみると、21 年度入試では、13 年度以降で初めて女性の合格率(合格者数/受験者数)が男性を上回り、男性の合格率が女性よりも高い大学の割合も、7 割程度から4 割程度に激減するなど、20 年度までとは明らかに異なる傾向を示している。この理由は明らかにされていないが、20 年12 月に文科省が毎年の男女別合格率公表を表明したことが、女性差別のない公正な入試の実施を後押しした可能性もある。

入試差別が完全に解消されたかどうかは、今後も長期にわたって経年的にデータを注視し、慎重に見極める必要がある。そのためにも文科省は、毎年、全ての医学部・医科大学の入試について、男女別合格率のみならず、受験科目ごと(筆記試験、面接等)の男女別成績なども調査し公表すべきである。

医学部入試差別の要因である出産・育児による女性医師の離職の背景には、過労死ラインを超えるような医師の過酷な働き方や、日本社会に根深い「男は仕事、女は家庭」という言葉に代表される性別役割分業がある。現状のままでは、入試差別が解消されても、女性医師は医師としての過酷な労働と家事・育児の二重負担に苦しみ、医療現場はより深刻な人員不足に陥るおそれがある。

保団連女性部は、男女ともに人間らしく働ける医療現場を実現するため、医師数の増員と、医療界の性別役割分業意識の解消に向けて、引き続き取り組みを強めていく。