2011.06.26 Sun

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ライオンとであった少女

訳者など:バーリー・ドハーティ ()

出版社:主婦の友社

 タンザニアの少女アベラは、父親が死に、村の慣習によって家土地は父の弟のものとなり、母親と二人放り捨てられ、過酷な暮らしの中で、母親を亡くしてしまいます。信じることを失った彼女をかろうじて支えてくれているのは、彼女を引き取った母方の祖母。しかし、無教養でもある祖母は、イギリスから不法入国で追い返された息子の策略で家土地を奪われ、アベルはこの叔父が再びイギリスに入国するための道具にされます。つまり、イギリス女性と偽装結婚した叔父はアベルを二人の間に生まれた子どもということにして、偽装家族でイギリスに入国を企てたのです。入国の後は女の子を欲しがる人間にアベルを売り払つもりでした。  叔父は捕まり、アベルだけが叔父が偽装結婚した女とイギリスへ。もう必要のない彼女は虐待を受けます。  一方、舞台はシェフィールド。タンザニア人と結婚し、今は離婚している白人の母親を持つ娘ローッザ。甘やかされて育てられていますが、なんと母親が黒人の養子を迎えたいと言い出したのです。怒るローザ。自分以外の子どもを母親は欲しいのか? そして自分が黒人だから黒人の子どもを欲しいのか? 彼女は荒れます。  物語の視点はこの二人の女の子に交互に切り替わって進んで行きます。読み慣れていない人には読みにくい構成ですが、巧く捕まってください。捕まれば大丈夫です。  イギリスに渡る前、好意で祖母が、古くからの風習であるクリトリス切除をアベルに行う(女性は快楽を得てはいけない)などといったエピソード(アリス・ウォーカー『喜びの秘密』、キャディ・コイタ『切除されて』参照)も、きちんと書き込まれています。

カテゴリー:女性学 フェミニズム / 人権 法律 政治 / ジェンダー セクシュアリティ / 文学 エッセイ 評論 / セクハラ DV 暴力 / 家族 / ひこ・田中の、 子どもの本イチオシ

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