2011.08.09 Tue

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フォスターさんの郵便配達

訳者など:エリアセル・カンシーノ ()

出版社:偕成社

 スペインの寒村。母親を失い、漁師の父親と二人暮らしのペリーコの日々を描きます。貧しい暮らしの中、父にはしかられてばかり。信頼して欲しいという彼の心はしだいにすぼんでいき、今は学校にもあまり行かず、時間をやり過ごしています。  そんな彼が、惹かれている二人の大人は、なぜか村人から疎まれています。一人はどこからかやってきて住み着いた皮職人イスマエル。もう一人は、なんの酔狂か、この村に家を買ったイギリス人フォスター。  時は六〇年代、フランコ軍事政権下。誰もが疑いの目を向ける時代です。  物語はそんな時代を背景に織り込みながら、いや正確には、そんな時代を背景に織り込むことで、子どもと大人の関係に緊張感を持ち込み、いやこれも正確には、関係の緊張感を見えやすくし、子どもが社会や世界への接続を探っていく様子を、時にいらだたしいほどに、ゆっくりじっくりと描いていきます。  だからといって難しいわけではなく、ある事件をわき筋に置いて、スリリングな展開も図っています。  邦題タイトルがややおとなしいので、地味ですが、中身はそうではありません。

カテゴリー:平和 戦争 / 家族 / ひこ・田中の、 子どもの本イチオシ

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