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東京

東京◆「BLの中の世界/世界の中のBL―「わたしたち」は何に萌えているのか?」

イベントURL: http://d.hatena.ne.jp/ari1980/20130910
主催者: 日本近代文学会
主催者URL;
開始日時: 2013年12月01日 (日) 14時00分
終了日時: 2013年12月01日 (日) 17時00分
会場: 日本大学文理学部3号館3404教室
会場URL: http://amjls.web.fc2.com/PDF2013/2013reikai.pdf
連絡先: 岩川ありさ(sirotanfun[あっと]gmail.com)
登録団体:
パンフレット:

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詳細: BLの中の世界/世界の中のBL—「わたしたち」は何に萌えているのか?

【発表者】
岩川ありさ
杉本ジェシカ
秦美香子
守如子

【コメンテーター】
藤本由香里

【発表要旨】

 本パネルでは、世界規模で受容されるようになって久しい、「BL(ボーイズラブ)」という表現形態について、国際的な視座からとらえ、日本文学、社会学、マンガ研究など、学問領域を横断する形で、ジェンダー規範やヘテロセクシズムとの相互関係について議論する。その際、BLマンガ、BL短歌、スラッシュなどを対象とし、広く、現在の文化的な配置の中で、何故、BLという表現が受容され、表現技法として洗練されるに至ったのか、歴史的な経緯について整理する。その上で、女性たちの欲望の表出の困難さをめぐって明らかになるジェンダー不均衡の問題や同性愛表象をめぐる政治性との関連について触れたい。

 岩川ありさは、「BL短歌」という新しいジャンルについて、文学研究の側面から報告する。「BL短歌」には、男性同士の親密な関係が直接的に描かれたものと、「そのように読めるもの」とに大別できる。「BL読み」できる短歌とは、いわば、規範的な性的枠組みが働いているところに斜線を入れる批評行為によって見出され、国家や社会の中で固定化された、ヘテロセクシズムを問い直し、規範的なジェンダー/セクシュアリティを維持しようとする力学へと介入してゆくクィア・リーディングの一種と定義できるかもしれない。本発表では、「BL短歌」というジャンルにおけるクィア・リーディングの可能性について考察する。
 
 秦美香子は、女性の欲望をめぐるマスメディアのナラティヴィティについて考察する。BL表現は、男性登場人物の親密な関係を描くことを通して想定読者である女性の性的欲望を描写する表現様式であると考えられることがある。そうした複雑な語りの方法が展開されていることを、女性の官能を扱うマスメディアのナラティヴィティについて論じた国内外の研究を参照しながら確認したうえで、現在のジェンダー秩序のもとで女性の欲望を語ることは困難なのかという問題について議論する。

 守如子は、マンガ表現の歴史をふまえて、最新のマンガ表現論を通して、BLについて議論を行う。マンガ研究において、「マンガはどのように表現しているのか」に着目するマンガ表現論に注目があつまっている。マンガ表現論は、表現技法の創造が「マンガが何を表現するか」を支えてきたことを明らかにしてきた。本報告では、少女マンガと少年マンガの表現技法の違いをマンガ表現論から明らかにすることで、日本のマンガ・アニメの国際的流通と、マンガ・アニメファンの文化の発展(BLの享受まで)の関係を、特に中国の状況をベースに論じる。

 杉本ジェシカは、グローバル時代のBLについて報告する。海外での日本マンガブームが始まって、はや18年が経つ。フランスやアメリカ合衆国に限らず、アジアや南米を含む諸外国でも、現地のマンガ業界に読者としては無視されてきた「女子」は、日本の少女マンガにはまり、そしてBLを発見することとなった。それぞれ文化背景も異なり、同性愛に対する認識や態度、それぞれが生きる社会の「一般常識」とされることも異なっている。にも関わらず、BLには「普遍的」といえるアピールがあり、例え法律上で同性愛の描写が禁じられていても、腐女子たちは頑張って工夫をし、社会秩序に逆らうまでその嗜好を追求してきた。本発表では、こうした様々な状況に置かれた「グローバル腐女子」の生き方について議論したい。

 以上のように、本パネルによって、幅広い学問領域において、多言語でなされているBL研究の「現在」を明らかにするとともに、「近代」におけるジェンダー/セクシュアリティそのものの問いなおしを行おうとする研究者たちの間に、新たなインターフェイスを構築したい。