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書くことは満身創痍の闘い 『発火点』 桐野夏生

2013.02.22 Fri

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 闘う作家、桐野夏生の12人の論者との対論集。桐野の対論相手は松浦理英子、皆川博子、林真理子、斎藤環、重松清、小池真理子、柳美里、星野智幸、佐藤優、坂東眞砂子、原武史、西川美和。テーマもセクシュアリティ、文学、貧困、天皇制等など、幅広い。

 わたしの趣味を承知で言うと、とくにオススメは、松浦、皆川、星野との対論。松浦は桐野に、影になった部分に含蓄とか美しさを見出す「秘すれば花」的なものではなく、剥き出しであることの美しさを表現したいという中上健次の文学観を、互いに共有しているのではないかと指摘する。

 また桐野、皆川のやりとりでは以下のやり取りがおもしろかった。桐野「…私、皆川さんに是非ともお伺いしたかったことがあるんです。長編も短編も今までのお作品を読んでいると、あまり恋愛を取り上げておられない」、皆川「興味がない(笑い)」、桐野「あ、やっぱりそうですか」。そのあとの展開に興味のある方は、是非、本書をお読みください。

 一方、桐野よりひと世代下の作家星野は、桐野の作品にみなぎる強烈な生々しさに魅せられている。星野は、全共闘世代周辺の男性の書き手はどこか信用できないが、桐野の作品では60年代、70年代のカウンターカルチャー的な価値観が有効なのだと納得できたと語る。

 次々と新しいテーマに挑む桐野夏生。今後の彼女の作品がますます楽しみである。(lita)








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タグ: / 女とアート / 桐野夏生