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アラブの春の、火 『火によって』 ターハル・ベン=ジェッルーン

2013.01.07 Mon

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.アラブ文学者の岡真理さんから、静かに燃える書物が届けられた。「アラブの春」は、日本で、日本を中心とする情報の波にさらされているわたしたちには、どこか遠い「革命」である。しかし、エジプトはじめ、いまだ若者たちのあの怒りの炎が鎮火する気配もないし、シリアでは、いまも内戦が続いている。

本書は、「アラブの春」の端緒となった、一人の青年の焼身自殺にいたる過程を、フランス在住の作家が想像力を駆使して描いた物語である。小さな本書は、小説でありながら、どこか寡黙だ。それは、中東を革命の炎に包むこととなった、焼身自殺を選ばざるを得なかった青年が、思慮深く、静かで、家族や恋人を気遣いながら、なんとか生き延びようとしていた、その姿と重なっている。

革命の発火点となったのは、理不尽な社会で、不条理な権力に翻弄されながら、そして実際に暴力に曝されながら、それでも日々を生き抜こうとした、主人公のムハマンドの死。イスラーム社会では、本当にありふれた名前に象徴されているように、かれもまた、闘う武器といえば、自身の身体一つしかない、英雄には程遠い、貧しく、つつましく生きている青年だ。かれがなぜ、自らの体に火を放つことになったのか。24章、たった80頁あまりの小説のなかで、一頁一頁、静かに、しかし克明に、かれの二日間の生活が描かれる。

小説を読み終えた後、翻訳者である岡さんの解説へと読む進むと、静かな、しかし、不正義に対する怒りの火に、また、自分の心をあぶられるような痛みを感じるだろう。そして、日本の読者も気づくに違いない。日本でも、毎日100人近くの人が自ら、この社会から逃れようと命を絶っていることを。(moomin)








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タグ: / 小説 / アラブの春