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NPO法人参画プラネット☆シンポジウム「NPOのチカラ2013」

2013.07.28 Sun

5月26日(日)13:30~16:30@名古屋市男女平等参画推進センター

NPOのチカラ2013―それは「女縁」から、はじまった!

1998年にNPO法が施行される以前から、女性たちは血縁、地縁、社縁を超えた「女縁」でつながってきました。この縁を女性たちがどのように自分の人生に取り入れ、活用してきたのか。そして、今後どのような未来を描いていくのか。今回のシンポジウムでは、まず3人の精鋭活動家による講演(セッション1~3)からはじまりました。以下に、お話の要点と、最後に行われたディスカッションの成果(セッション4)をまとめます。

■セッション1:それは「女縁」から、はじまった!
発表者は上野千鶴子さん。「女縁」研究者であり、「女性をつなぐ総合情報サイト」を運営している認定NPO法人ウィメンズ アクション ネットワーク(WAN)」の理事長です。

「女縁」とは、血縁、社縁、地縁を超えたところでつながっている女性たちのネットワークをいいます。女性が自分の意志で、選択し、助け合っていくためのつながりであり、加入、脱退が自由で強制力がなく、まるごとのプライバシーを要求しない選択縁。男よりも女の世界で先行しているため、「女縁」と名づけました。

これまでの私たちの調査から「女縁」のキーパーソンは、主に転勤族の妻であることがわかっています。夫の仕事の都合でその土地に住まなければならなくなった女性です。受動デラシネ族(夫の都合で根なし草になったため)とも呼びます。
経済的なゆとりと時間のゆとりがあるだけでなく、ひととひとのつながりを作り出すチカラがあります。お互いを助けながらエンジョイし、出歩くのが好きです(笑)。○○さんの奥さん、お母さんで呼ばれるのではなく、個人の名前で呼ばれるのを好みます。
自宅の近くに、親戚縁者もいない彼女たちは「女縁」で助け合いをし、忙しい人ほどたくさんのグループに参加しています。つまり、多様な顔を持ちながら、さまざまな縁をつくり出しているんです。男たちも学んでほしいですね。1998年のNPO法、介護保険法制定が、こうした「女縁」活動が収入を生む事業になる後押しとなったといえます。

日本の社会では、結婚や妊娠でいったん仕事をやめてしまうと、ほとんどの企業では正規の社員として採用してもらえないという現実があります。非営利のNPOは自分たちの目の前のニーズから出発する点が、営利を目的とする企業と決定的に違います。行政に依存しない=自主独立の女性たちの力が地域を変え、社会を変えてきました。

■セッション2:NPOを支える社会の変化は?
発表者は石井布紀子さん。NPOマネジメント支援者であり、NPO法人さくらネット代表理事でもあります。

1992年に「すくーるすばる」を開設・起業し、社会の隙間のサービスをはじめました。その後、1995年に発生した阪神淡路大震災がきっかけとなり、NPO活動、被災者支援活動に関わるようになりました。当時、私は28歳で、今年で18年目になります。

1998年には特定非営利活動促進法が、2000年に介護保険法が施行されました。私としては、2000年に「(有)コラボねっと」を設立、社会人として仕事をするようになってから、ちょうど10年目のことでした。その後、支援の仕組みづくりや人材育成の仕事を続けています。社会では、NPOセンター(NPOに関する中間支援組織および応援組織)などにおける「公共」に関する協議が本格化したものの、正直なところ、「官」に振り回される状況が続きました。

さらに時は流れ、2008年には、防災や被災地支援の活動の部分について、NPO化が不可欠となり、NPO法人「さくらネット」を組織化しました。災害時でも平常時でも、生命と暮らしを守り、個人がイキイキと暮らせる社会をつくるためには、〝官民協働による仕組みづくり″と、〝市民主体の運動展開″が両輪で進むことが不可欠だと感じています。私個人としては、専門性向上のための社会的な試みを増やすこと、「女縁」の情報ネットワークをさらに推進し、脱男性社会のマネジメントを推し進めることが重要だと思っています。
今、NPOマネジメントにおいて問題なのは行政制度の枠組みの中でしか、NPOが食べていけるだけの組織になりにくいことだと思います。

■セッション3:「女縁」NPOの可能性は?
発表者は渋谷典子さん。NPO活動実践者、NPO法人参画プラネット代表理事です。

現在、NPO法人参画プラネット代表理事のほかに、認定NPO法人ウイメンズアクションネットワーク(WAN)副理事長、認定NPO法人UN Women日本国内委員会理事、NPO法人手しごと屋理事、公益財団法人21世紀職業財団愛知県駐在代表などをしていますが、どれもが「女縁」からスタートした活動です。
上野さんが最初に「女縁」について書かれた書『「女縁」が世の中を変える』は、図書館から借りてきて読み、共感してコピーをとって今も保管しています。今日のテーマに関係する『「女縁」を生きた女たち』は、2008年に上野さんが郵送してくださった本です。
20年間続けている活動は、「女縁」が基礎となって動いています。時間資源、貨幣資源、わたくし源が必要!と、上野さんは『「女縁」を生きた女たち』で書かれています。その発展系―仕事の保障、時間の保障、人格の保障で、現在、わたしたち参画プラネットの活動は動いています。
今日は、仕事、資金、人材の可能性について考えてみました。介護保険制度、国や自治体からの受託事業、指定管理者事業など「公」がNPOという存在を活用して政策を実現するといった手法―これを「公」からのコミットとして位置づけると、「私」からのコミットとしては、ボランティアや寄付があげられると思います。仕事も資金も人材も、「公」と「私」のコミットを生かしつつ、NPOの運営を続けていくこと。そのためには、バランス感覚が重要…そう思っています。
20年間を振り返ると、<気がつけば「女縁」だった><「女縁」で思わぬ展開が…>これが本音です。とはいえ、「女縁」には法則があると気づきました。一つめは双方向の信頼関係…依存関係ではありません。二つめは「ナマモノ、いきもの」であること…常日頃のメンテナンスが必要です。さらに「プラットフォーム」…「女縁」で出会い活動できる場があること。この三つです。
「女縁」NPOの可能性が拡がるプラットフォームとして、ウイメンズアクションネットワーク(WAN)の活動へ。いま、転換期にきている活動をとおして「女縁」NPOの可能性を追求しつづけます。

■セッション4:10年+(プラス)プロジェクト!始動。

「女縁」NPOの可能性を探る事例として「女性をつなぐ総合情報サイト・ウィメンズ アクション ネットワーク(WAN)」の活動が紹介され、参加者の方々の質問に、壇上の上野さん、石井さん、渋谷さんの3人が応えるスタイルで活発なディスカッションが進みました。

上野さんは「昨年、NPO法が改正され、以前より早く認定が取れるようになり、WANも認定NPO法人になりました。ですが、現実問題として、最初に解決しなければならないのは資金の問題です。WANの場合、関わっている方々の活動は無償で行われています。年間600万円かかっている費用のすべては、会員による会費と寄付によってまかなわれています。活動を担うボランティアと会費を払ってくださる会員とは、消費者と株主のようなもの。活動と運動が両輪となってWANがあります。裾野を増やし、わずかなお金でもいいから、寄付もほしい」と語りました。
渋谷さんからは「資金もほしいが、ボランティアの方々の参加もお待ちしています」との声があがり、さまざまなひとたちから多様な価値観を学ぶことも、NPOの運営においてプラスに作用していることがわかりました。
上野さんがNPO界の〝カリスマ″と高く評価する石井さんは「共感の意志決定が不可欠。プロセスを大切に。資金、ボランティア、知恵、もの、情報、すべてが必要です」と語りました。NPO組織のマネジメントを通じて、法律をどう変えていくのか。社会をよくする“世直し”の仕事を拡げるには、資金とボランティア、それぞれの責任を循環させることができる組織、NPOを活用するしかないのが現状であることを伝えました。
参加者のなかには、仕事が忙しいため、自分の時間を使うことはできないが、NPOに寄付をすることで支援している方もいました。いろいろなカタチ、つまりお金、モノ、活動と方法は異なっても、参加者がそれぞれの立場で、どのようにNPOと関わっているのか、その発言から伝わってきました。

NPOにとって法人格が社会的に必要である理由の一つに、法人でない場合には契約関係を持つことが難しいという現実があります。上野さんの言葉をかりれば、まだ日本は「NPOという道具を使いまわして試行錯誤している段階」かもしれません。いま、直面している課題をどのように解決し、これからの活動を展開するのか。
次の10年に向けて…「女縁」NPO !Take Offのとき。

「NPOのチカラ2013」は、認定NPO法人ウイメンズアクションネットワーク(WAN)と共催で実施いたしました。

カテゴリー:参画プラネット

タグ:上野千鶴子 / 女性センター