シネマラウンジ

views

3166

母と息子の関係を通して描く現代ルーマニアの政治的寓話 『私の、息子』 川口恵子 

2014.06.09 Mon

 

 映画『私の、息子』は、近年、世界的に注目されている「ルーマニア・ニューウェーヴ」の若き旗手によるきわめて現代的な社会派心理劇であり、政治的寓話だ。 筋立ても主題もシンプルだが、ドキュメンタリー調の清新なカメラワークがとらえる家族模様の背後から、現代社会の抱えるさまざまな矛盾や、生きづらさといった普遍的テーマが浮かび上がる。

 それでいて、最後には、ある種、浄化された映画的瞬間が訪れる。その時、この映画の主要登場人物たる「支配的な母と自立できない息子」は、それまでのもつれあった親子間の愛憎から解き放たれ、それぞれに良心というべきものを取り戻す。彼らの乗りこんだBMW車のただ中で、その奇跡の時は起きるのだが、その直前、

私の、息子メイン

 映画のラスト近く、リアウィンドーとサイドミラーに映る人間ドラマを見逃しては、本作のもっとも映画的にすぐれたところを見逃してしまうことになるだろう。 全篇とおして、人間の魂の奥深くから発生するさざ波のように微細な感情の変化をとらえ、逃さない静謐なカメラワークにも注目していただきたい。

(パド・ウィメンズ・オフィス発行 『女性情報』 6月号掲載予定の映画評より、一部抜粋)

 Pozitia Copilului (原題)  CHILD’S POSE (英題)

6月21日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

(C)Parada Film in co-production with Hai-Hui Entertainment All rights reserved.

トーク付試写会イベントご案内

6月16日(月)、 この映画の、公開直前、トーク・イベント付試写会が行われます

18:00 開場

18:30 上映開始

20:30~21:00 トークイベント 信田さよ子さん x 田房永子さん 

会場 映画24区   
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-20-8 千駄ヶ谷S’ビル B1階

お申し込み先: 配給元 マジックアワー info@magichour.co.jp 

注意: お名前、ご連絡先メールアドレス、電話番号(当日連絡先)をご記入の上、直接、上記アドレスにお申込みください。

なお、WAN会員の方は、会員である旨、明記してください。 会員20名まで受けつけています。 

詳しくは 映画の公式HP こちら をご参照ください。  応募要項のほか、予告編など、映画についての詳細も見ることができます。

私の、息子サブ2監督:カリン・ペーター・ネッツァー
出演:ルミニツァ・ゲオルギウ、ボグダン・ドゥミトラケ、イリンカ・ゴヤ

2013 ルーマニア/1:2.35/ドルビ-デジタル/112分

配給:マジックアワー

第63回ベルリン国際映画祭 金熊賞(最高賞)受賞
アカデミー賞外国語映画賞ルーマニア代表作品

私の、息子サブ3

ストーリー: ルーマニアの首都ブカレストに住む女性建築家コルネリアは、いわゆるセレブリティ。 パーティーを開けば、各界の著名人が集まる。 しかし、彼女にはひそかに悩みがあった。 一人息子との関係がうまくいっていないのだ。 息子もまた、富裕な母の経済力の影響下から脱しきれず、自立できないことに苦しんでいる。 そんなある日、コルネリアの元に、息子が起こした交通事故の知らせが入る。 警察に向かった彼女は、金とコネの力で息子を救おうと、奔走し始めるのだが・・・

カテゴリー:新作映画評・エッセイ

タグ:くらし・生活 / 高齢社会 / 川口恵子 / 女女格差 / 母と息子 / ルーマニア映画