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今では日本の根深い女性差別(=男性へ高い下駄を履かせる社会)の象徴のようになってしまった、悪名高い医学部入試女性差別事件ですが、私達が行っている集団的訴訟の最初の判決がこの5月19日(木曜日)11時に出ます。私達は、東京医科大学・順天堂大学・聖マリアンナ医科大学の3つの大学に対して裁判を行っておりますが、19日に判決が出るのは、このうちの順天堂大学訴訟です。
今までの振り返り
判決が出るということで、ここで、この事件を最初から振り返ってみましょう。
2018年8月、耳を疑うようなニュースが入ってきました。大学の入学試験の採点で、女性受験生は「女性」という理由だけで、一律に、男性受験生より点数を低くされている。公平と信じられていた大学入試の場で、水面下でこっそりと男性の点数を加算したり、こっそりと女性の点数を引いたりする操作が行われている、それも長年も!というニュースでした。一番はじめにこのニュースに触れた際、意味がわかりませんでした。意味がすんなりと頭に入ってきませんでした。公正公平に行われていると、誰もが信じて疑っていなかった最高学府である大学という教育機関の入学試験のことです。え?!ナニ?そんなことがあるの?!と、驚愕し、日本中が震撼しました。戦前の話ですか?いやいや、2018年ですよ。昭和がとうに終わり、平成も30年になり、そろそろその平成すら終わろうとする頃です。こんなことってあるのか?あったのか?と、怒りを通り越して、もはや、こんな日本なんかにいたくないと、日本脱出を考えた女性も多かったのではないでしょうか?(私は、その頃、前年に日本の司法試験を合格し、当時は司法修習生でしたが、このニュースに触れた際、日本やだ!アメリカの司法試験を受験して日本なんて飛び出したい!と本気で感じました。残念ながら英語ができないので諦めましたが)
そして、皆様、覚えてらっしゃるでしょうか?ここけっこう大事です。この医学部入試女性差別事件は、「女性差別」そのものを調査している過程で発覚したのではありません。このとんでもない事実が発覚したのは、文部科学省の高級官僚が、自分の息子を不正に東京医科大学に入学させたこと(いわゆる裏口入学)による贈収賄事件についての調査の過程で発覚したのです。このこと、皆様は、つい忘れているのではないでしょうか。つまり、この高級官僚の裏口入学事件がなかったならば、大学入試の女性差別も一切発覚することはなく、今でも、そして、この2022年の2~3月に行われた大学入試においても、これからもずーっと、大学は組織ぐるみで、女性受験生の点数を水面下でこっそりと下げたり、男性受験生の点数を水面下でこっそりと下駄を履かせた上で、涼しい顔して、しれっと「今年の合格者」を発表していたのでしょう。そう考えると、ゾッとします。裏口入学をした高級官僚さんには感謝の念しかありません。裏口入学をしてくれて、ありがとう、そのおかげで、日本の女性差別のひとつを潰すことができました、感謝いたします。
さて、最初に発覚したのは東京医科大学の差別入試でしたが、その後、調査をするうちに、そのような水面下での操作を継続的に行ってきた大学が、ぞろぞろと出てきました。かなり多くの大学が、「女性」という性別に対して、点数を「減点」、あるいは、「男性」という性別に対して、点数を「加点」してきたというのです。もう、びっくりしすぎて開いた口がふさがりません。そのうちのひとつである順天堂大学が記者会見で弁明した「言い訳」が、これまた有名な言葉になりましたね。実におもしろい言い訳をしました。順天堂大学は、記者会見で、女性の点数を一律に低くした理由をこう言いました。「女性は、男性に比べて、コミュニケーション能力が高い。男性はコミュニケーション能力が低い。なので、男性受験生への救済として、女性の点数を一律下げたんです。けっして女性差別のつもりはありませんでした。」このように、医学の教育機関のトップであるお偉方が言ったのです。こんな人達がトップにいる病院、大丈夫でしょうか?(私は、この会見の模様をテレビで見て、テレビにリモコンを投げつけたくなりましたが、リモコンとテレビが壊れるのがもったいないからやめました)
今の日本では、就職活動などで、事実上、男性が女性より有利に扱われたり、就職してからも、出世や給料で、事実上、男性が圧倒的に優遇されているというのは、残念ながら現在でも、当たり前のようにあります。(いやいやそんなことはない、今の日本は平等で、そんなのは過去の話だ、という声も聞こえてきそうですが、いつの時代も、優遇されている側は、差別に鈍感であり、自分がされていない差別は見えないし感じとれないものです)しかし、この大学入試においての女性差別は、そんな「事実上」のものなんかではなく、「気のせいかもしれない」ものでもありませんでした。きっちりと計画的で、とっても「丁寧に」差別されていました。同じ日に同じ試験を受けて同じ「素点」を獲得した受験生が、男性受験生なら加点され(大学によっては女性受験生なら減点され)、最終的な「評価点数」に男女で差を出し、その「評価点数」の上から順番に「合格者」を決めていくという方法をとっていたのです。ドラえもんに登場する優秀ツートップの静香ちゃんと出木杉君が、テストで二人とも80点をとったとします。答案返却の前に、先生が、こっそりと水面下で、「出木杉君は男の子だから10点プラスして90点、静香君は女の子だから10点減らして70点」という評価をして通知表に記入してから、二人に返却してたのです。どれだけとんでもないことか理解していただきたいです。さらに、恐ろしいことに、これは、先生個人の裁量なんかではなく、大学が組織ぐるみで、男性加点(女性減点)の計算式を採用した入試選抜システムを作り、長年の間、それを毎年毎年継続してきた、というのです。とってもご丁寧です。
この不公平システムで、いったい何人の女性受験生が泣いてきたでしょうか?本当は合格していた女性受験生が、点数操作のせいで不合格扱いとなり、もう浪人できないからと小さい頃からの医師の夢を諦めた人や、あるいは、それでも来年こそは!と再浪人し、もっともっと努力し親に頭を下げて高い予備校代を出してもらい、次年度も受験し、しかし、また水面下の不公平システムにひっかかり不合格扱いとなった人もいます。私には、彼女たちにかける言葉がみつかりません。ただ、一緒に悔しがるだけが精いっぱいです。ここに、司法や弁護士の無力さも感じました。
結び
今回、たまたま、大学医学部の入学試験で、裏でこっそりと男女差別が行われてきたことが発覚しましたが、私は、これは「氷山の一角」にすぎないと思っています。残念ながら、2022年の日本社会においても、まだまだ発覚していない明らかな男女差別が相当あるでしょう。ひとつひとつ露呈させ、ひとつひとつ改善させられればと思っています。微力ながら努力していきたいと思います。
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