2011.07.19 Tue
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.「女三界に家なし」という言葉がある。昔この言葉を聞いたとき、妙にひきつけられた。この、ぞっとするほどの諦観と、そう言い切っても生きるしたたかさ。「家を持つ」ことなどなくても、どこででもするり、するりと生きていくような。またはそんな小気味よさとは無縁の絶望をあらわしているとしても、それをこのような「紋切型」にして人々の口の端にのぼる言葉にしてしまうことで、その絶望を皆でわけあっているかのような、ことわざの力。しかし「さんかい」が「 欲界・色界・無色界、つまり全世界」(大辞林)を示す「三界」だと知ったのは最近のこと、ずいぶん長い間、「三階…?まさかね。三界かな?前世、現世、来世?この世、あの世?」などと思いながら調べることもなくやりすごしていたので。この言葉を久々に見たのが本書『ラヴソング』の中の、キャロル・キング「You’ve got a friend」の訳・詩と、解説を書いているパートである。女三界に家なし。女友達に電話で愚痴と泣き言を聞いてもらっていた頃、そんな言葉をかみしめていたという。ほかにも、そんなどん底みたいなおんなの描写がたくさん出てくる。たとえば「やぶれかぶれ」「助けてほしい、どーしたらいいのかわからない」「むきだしの神経がこすられてきしんで 痛みにのたうつ」などなど。なのにどうして、救われていくのだろう、この人の言葉を読むと。それはこの人の言葉がどん底のおんなの、キャロル・キングの歌でいうfriendのような存在で、それもどん底のおんなとどん底でない友達、という図ではなくて、わたしもどん底、あなたもどん底、でも大丈夫、女三界に家なし、家がなくても大丈夫、というようなfriend、だからじゃないだろうか。(Anna)
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