【フェミニズム入門塾 第6回「セクシュアリティ」受講生レポート】
フェミニズム入門塾 第6回「セクシュアリティ」レポート/鳥井
セクシュアリティといえば、セクシュアルマイノリティが連想される。セクシュアルマイノリティが性自認をカミングアウトした時に、された側が「あなたの性志向が何であれ私の態度は変わらないよ」という反応が正解とされる事が多いが、これはお門違いの反応だという。カミングアウトした人は自分の性自認を相手にぶつける事で「で、あなたはどうなのか?(性自認は?何者なのか?)」と問いているという。
これを聞いた時に私はなるほど!確かに!っと、この会話がなされた時の対話の意味に合点がいった。
マジョリテイとされている異性愛者の多くの人は自分の性自認や性的思考について深く考えるという事をどれ位しているだろうか。異性愛者でない人達は社会が提示している規範に反しているが故に常にそのことについて自問と思考を続けている。対して社会が提示している規範に強い違和感を覚えていない人がわざわざ、それについて考えることはない。思考停止で異性が好きという社会規範を受け入れている。セクシュアリティやそれに伴う恋愛に関してはその傾向が強いと感じる。
マジョリテイの側にいる時、思考が停止している現象はマイノリティになって気づく。私は子供の時から結婚に憧れや願望が無かったが、適齢期を過ぎて学生時代の友達がほとんど結婚してしまい、結婚にとても関心が出てきた。私にとって結婚は目的ではなく、縁があればするし、なければしない、となんとなく思っていた。それなのに周りは20代半ばで次々に取り残されないように義務のように結婚していき、驚きながら観察していた。
そんな私も30代前半で結婚の話しが進んだことがあったが、その際に強制同一姓婚という問題にぶつかった。もともと結婚に憧れがなかった私はセオリー通り(女性が苗字を変える)の結婚に納得できず、結婚について深く考え、調べた。身近な人達に疑問や考えをぶつけてみたが周りからの共感は少なかった。「なんでそんな事を言っているんだ?」という視線を感じた事もあったし、既婚者の友人からは「そんな事考えたこともなかった」という反応もあった。私の結婚に対する違和感や疑問は、王道の人生を歩んでいるマジョリテイな人には無いものなのだ、この点に関して私はマイノリティで規範に沿っていないからこんなに色々考えなきゃならないのだと実感した。
講義で性には歴史があり、歴史があるというのは自然や本能ではなく、文化や社会であるとのことだった。社会が文化として、異性愛の秩序を作ることで国家が身体や生殖を管理しているという。結婚制度は国家による制度の一つと聞いて、なんとなく人間の生業のように捉えられている(人が多いように感じる、、)が、国家が歴史をもって作ってきた制度なら、私の志向がマッチしない事も必然だと冷静に受け止められ、セクシュアリティとは国家によって作られた結婚制度を下支えする基盤として設定されたカテゴリーなのだと理解できた。そして、この制度のためにセクシュアリティのカテゴライズが強固に守られてしまっており、そのせいで、本来多様で流動的なはずのセクシュアリティが苦しめられていると感じる。多様性と叫ばれながらも、多様な社会の制度作りが一向に進んでおらず、テレビドラマや小説・漫画の物語、マスコミや会社や親の圧力を受け、30代の私の世代でも結婚至上主義は健在だと感じていたが、先生の「ロマンチック・ラブ・イデオロギーの洗脳は解けてないし再生産されている」との一言に「やはり……」と認識を再確認した講義だった。
補足:
性産業や性暴力の話も講義の中では取り扱った。私は性産業の問題や性暴力は家父長制や家父長制から来る女性蔑視に基づいたものだと考えている。
性産業は女性を物とみなす事や性産業従事者への差別意識が問題となることが多い。性産業の可否についても問題になることがあるが、私はその職業が天職の人もいるのではとの考えがあり否定に賛成するのに戸惑いがある。私が問題だと思うのは女性蔑視で賃金格差が蔓延している社会の上になりたっている性産業が問題であると思う。賃金格差や職業へのアクセスの不平等は、不平等にされている側をより性産業へ近づけ、追いやる確率を上げる。好きでその仕事に就けばいいが、追いやられてその仕事を選択せざるえないのでは全く意味が違うし、今の社会では男性より女性の方が圧倒的に性産業へ追いやられてしまう確率が高い。また、性産業への従事者だからこそ性的なことは何をしてもいいという考えがあるが、その考えも根本を見れば女性蔑視の考えがあると思う。なぜなら、女性の性従事者にそのような批判を言われることはあるが男性の性従事者へは聞いたことがない(私がその分野に疎いだけかもしれないが…)。性暴力被害者への哀れみの視線や蔑視の視線も、女性蔑視で男性が作った女性像と違うと勝手に判定し、批判しているところにあると思う。
これらの問題は難しいし、私は勉強不足だと思うが、家父長制をなくして、女性・男性、その他のセクシュアリティ、すべての人が同等の権利を持つ社会を作れれば、自然となくなる問題なのでは…(その道は険しすぎるけど近づけていかなければ)との考えは今回の講義を聞いても変わらないものだった。
2022.05.09 Mon
カテゴリー:新編「日本のフェミニズム」
タグ:慰安婦 / 仕事・雇用 / DV・性暴力・ハラスメント / セクシュアリティ / リプロ・ヘルス / 女性政策 / 子育て・教育 / 性表現 / LGBT / DV
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