女の本屋

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京都の「とくべつな本屋」さん 『女の本屋の物語』中西豊子

2011.07.24 Sun

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.私は、この本の舞台であるウィメンズブックストアから100メートルも離れていない場所で生まれ育った。1982年に京都で開店した日本初の女性問題専門書店だ。1980年から3年間通った中学校はその真向かい。しかし、毎日のように前を通っていながら「とくべつな本屋さん」があるということしか知らなかった。

成人して、そこが日本初の女性問題専門の書店であったことを知って、そんなに意義ある場所だったのか、と(自分が何をしたわけでもないのに)地元を誇りに思ったものだった。

そしてこの本を読んで、この「本屋」の建物の中で、想像していた以上にさまざまなことが起こっていたことを知った。創作的なアイデアが飛び交い、制作や会議が行われ、中西豊子さんと上野千鶴子さんが出会っていた。そんなすごいことが子供の私のすぐ近くで起こっていたのか、と感慨ひとしおである。

もちろん、彼女らの活動は、日本の女性―ひいては男性の―生き方大きな影響を与えることになる。私は今42歳だが、私たち以下の世代の女性が(まだまだ課題はあるにせよ)しばしば無意識に享受している自由の多くは、「昭和・平成フェミニズム」―と勝手に呼ばせていただこう―の活動のおかげである。そして中西さんは、その活動にいい意味での「温床」を提供してきた人だ。

この本では、中西さんが目を患うほどの努力をして「床」を温め、育んできた様子が、彼女の自己と社会を見つめる冷静な目を通して表現されている。

また、中西さんの京都の商家での生い立ち、商家の女将として忙しい日々の作業をテキパキとさばいていたお母様、中西家にとっての戦争と疎開経験、そして中西さんが結婚してからの主婦時代のストーリーが、彼女のフェミニズム活動の動機の背景として描れている。これらのストーリーは、必ずしもジェンダー問題を学んでこなかった読者にも、自分自身と重ねて比較し、ひいては女性としての生き方を考えるきっかけを与えてくれる。

うなづいたり、爆笑したり、しんみりしたりしながら、気軽に読める一冊。(広瀬直子)








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