
本書は、東京大学教授でフェミニズム/クィア理論が専門の清水晶子さんが、さまざまな切り口でフェミニズムを捉え直したVOGUEオンラインでの連載(「VOGUEと学ぶフェミニズム」)をまとめた一冊です。書かれた時期は2020年4月からの2年間。奇しくも世界が新型コロナウイルスで混乱に陥り、アメリカではブラック・ライブズ・マターの運動が再燃、中絶の権利を認めた判例が覆されるバックラッシュの動きが見られ、さらにはロシアによるウクライナ侵攻が始まるなど、生と性が揺るがされる混沌とした時期でした。
そこにフェミニズムのルーペをかざせば見えてくるのは、たとえばコロナ禍で私たちにも身近になったエッセンシャル・ワーカーの存在や、外出自粛期間中に育児や介護を担わなければならなかった家庭内のケア労働のこと。あるいは、政府のコロナ対策救済措置から外されたり、経済的な打撃を真っ先に受けたセックスワーカーたちの存在。ではケアやセックスワークをフェミニズムはどう捉えたらいいのか? 清水さんは現在進行形の問いを掘り下げ、フェミニストたちの中でも分かれる見解の相違を一つにまとめることなく、繊細に解きほぐしていきます。
それは「はじめに」に置かれた次のような言葉とも響き合うものかもしれません。
「フェミニストたちの意見が一致しないのは、ある意味では当然のこと」「フェミニズムがその可能性を広げようとする「女性たち」の「生」は、とてつもなく多様だからです」「むしろその不一致にこそ、変革の力としてのフェミニズムの可能性があります」
性や生殖、中絶や性暴力、結婚などフェミニズムの文脈において長く語られながら改めて見つめ直す必要に迫られている喫緊のテーマから、コロナ禍やブラック・ライブズ・マターで注目を集めたケアやインターセクショナリティの視点まで、幅広いトピックを通して語られる本書は、まさにこれからフェミニズムを知りたい、学びたいと思う人たちに開かれた一冊です。
◆目次
1 フェミニズムってなんですか?
2 フェミニズムの四つの波――フランケンシュタインから#MeTooまで
3 フェミニズムにおける、性と生殖という「難題」。
4 「個人の自由」の意味を、フェミニズムは問い続ける。
対談Ⅰ フェミニズムに救われた二人の対話――長島有里枝×清水晶子
5 フェミニズムに(も)「インターセクショナル」な視点が必要な理由。
6 現代カルチャーシーンとフェミニズム――ドラマが教えてくれること。
7 女性リーダーに見る次世代リーダーシップのあり方。
8 性暴力を正しく理解するために。
2010年からのエンタメと考える、性暴力とその奥にある問題。
9 なぜ”ケア”は黙殺されてきたのか。コロナ禍に考える新しいケアのあり方。
10 日本の性教育の転換期に考える、真にヘルシーな性教育とそれがもたらす効果。
11 夫婦同姓に同性婚。課題山積の「結婚の不都合な真実」、
対談Ⅱ 五輪開幕で考えたスポーツにおけるセクシズム――井谷聡子×清水晶子
12 セックスワークをフェミニズムはどう捉えるか。
13 フェミニズムから教育の多様性を考える。
14 フェミニズムは「中絶」をどう捉えるか。
15 「性」を支配するのは誰なのか? オルタナティブな性を考える。
16 誰も完全には自立していない――オルタナティブな「家族」のあり方と依存の受容。
対談Ⅲ 共感の危うさと生き延びるための言葉――李琴峰×清水晶子
◆書誌データ
著者・清水晶子(しみず・あきこ)
タイトル・フェミニズムってなんですか?
定価・1078円(税込)
総頁・256頁
発売日・2022年5月20日
出版社・文藝春秋(文春新書)
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
脱原発
女性政策
憲法・平和
高齢社会
子育て・教育
性表現
LGBT
最終講義
博士論文
研究助成・公募
アート情報
女性運動・グループ
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