令和の時代にワークライフバランスが課題になっているが、筆者者は日本企業が四大卒の女性の採用を喜ばなかった70年代に外資系航空会社に就職し、働き方、仕事に対する考え方の違いに目を見張った。30年近く勤務したドイツ企業では、同一労働同一賃金、明確に規定されている業務の責任、労働時間の自己管理、車内ポストの公募制、パートとフルタイムの業務は内容も責任も同じで給与の違いは労働時間の差という環境であった。故に筆者は仕事と家庭、育児の両立にさほど苦労は感じなかった。
 人材教育も盛んな企業だったので筆者は50歳ころに社会人で大学院で学び直し、57歳で大学教員および役員として働き、観光や航空事業論、広報戦略を教え、現在は国立大学の監事とともにドイツの大学の客員教員を務める。
 日本はいくら法律や制度を整えても独特の日本文化で運用が邪魔されている。本書はその原因を探る内容であるが、それが航空会社のエピソードに沿いながら解説される。休暇の考え方、事故時の乗員への対応、戦争や紛争勃発時の航空会社の役割、マスコミ報道の違いなと、多様化グローバル化に対峙する日本で参考になる話ばかりである。AI時代に対応して同調圧力に負けない若い世代を育成するには何が必要かを考えさせる一冊である。

◆書誌データ
書名 :なぜ日本社会では女性が輝けないのか
著者 :大島愼子
頁数 :164頁
刊行日:2022/4/1
出版社:文芸社
定価 :1320円(税込)

なぜ日本社会では女性が輝けないのか

著者:大島 愼子

文芸社( 2022/04/01 )