牟田和恵(むた かずえ) 最終講義
タイトル:ジェンダー研究の40年—-教育・研究・裁判
2022年2月28日(月)14:30~16:30
対面会場:大阪大学人間科学研究科 キャノピーホール
オンライン会場:Zoomによる配信
退職年月日:2022年3月31日
専門分野:社会学、ジェンダー論
プロフィール
佐賀大学・甲南女子大学を経て、2002年から大阪大学人間科学研究科コミュニケーション社会学・ジェンダー論講座教授。
2022年4月より大阪大学名誉教授、グラスゴーカレドニアン大学客員教授。
主な著書に、『戦略としての家族―近代日本の国民国家形成と女性』、『実践するフェミニズム』、『ジェンダー家族を超えて―現代の生と性の政治とフェミニズム』『部長、その恋愛はセクハラです!』、『フェミニズム・ジェンダー研究の挑戦:オルタナティブな社会の構想』(編著)など
最終講義では、「ジェンダー研究の40年ー教育・研究・裁判」と題し、私が教育研究上たどってきた道筋を振り返りつつ話をしました。歴史社会学的な観点から、近代化とジェンダーポリティクスに関して研究と教育を続けてきましたが、そのかたわら、一貫して裁判とかかわってきました。最初の研究職就職であった佐賀大学勤務時に、日本で初のセクハラ裁判となった福岡訴訟に支援組織代表としてかかわり、それまで日本ではほとんどまったく知られていなかった「セクシュアル・ハラスメント」の概念が広がり社会のそれまでの常識を揺るがすことになったのを目の当たりにしました。その後も大学を舞台としたセクハラ事件、セクハラで処分された教員が大学や被害女性を訴え返す対抗訴訟等、さまざまな裁判の現場で多くを学びました。そして大学での教員生活の区切りを迎えるにあたり、今度は、女性のセクシュアリティと身体の問題や「慰安婦」問題と性暴力について取り組んだ科研研究について、国会議員から事実無根で女性差別的な誹謗中傷を受け、共同研究者とともに原告として闘っています。裁判は大阪高裁に控訴した段階ですが、裁判所の「歴史修正主義」的姿勢や女性研究者軽視があらわになり、私自身の研究教育の原点をあらためて確認しているところです。裁判の詳細は「国会議員の科研費介入とフェミニズムバッシングを許さない裁判」支援の会」(略称フェミ科研費裁判支援の会)HP https://kaken.fem.jp/ でご覧ください。
2022年7月に、指導してきた、と言ってはおこがましいですが、ともに学んできた若い世代の研究者とともに、『フェミニズム・ジェンダー研究の挑戦:オルタナティブな社会の構想』を無料電子書籍として公開しました。https://doi.org/10.18910/88593 こちらからお読みいただけます。