
●2022年2月、前代未聞のニュースが飛び込んできました。
米国サッカー連盟が女子代表チームの主張を認め、男女平等賃金と2400万ドルの和解金の支払いを約束したのです。
アメリカでは、男子サッカーが奮わないのに対し、女子は世界ランキング1位、五輪でもW杯でも優勝を重ねる押しも押されぬ存在です。にもかかわらず、一貫して男子の方がはるかに高い報酬で好条件でした。
「こんなのはおかしい」と女子選手たちが声をあげたのも無理はありません。
しかし、それは何年ものあいだ退けられていました。
この画期的判断は、女子チームの面々が諦めずに粘り強く闘ってきた結果です。
その中心人物が、本書の著者ミーガン・ラピノーでした。
●アメリカのプロサッカー選手であるラピノーは、4歳で初めてサッカーボールを蹴り、少年チームでも男子を圧倒してきました。
十代で早くも頭角を現し、米国女子代表選手に選ばれます。
その後、2012年ロンドンオリンピックで金メダルを獲得し、男女を通じてオリンピック初の「コーナーキックから直接得点」という快挙も達成しました。
さらに、2015年と2019年の女子ワールドカップでも優勝。2019年大会では最優秀選手賞と得点王に輝いたうえに、女子バロンドール(その年の世界最優秀選手)も受賞しました。
そうしたアスリートとしての輝かしい活躍と並行して、社会的な活動も積極的に行なってきたことで、世界の熱い注目を集め、2022年には、ついに大統領自由勲章も授与されました。
大統領自由勲章とは、「米国の繁栄、価値、安全保障、世界平和、その他の重要な社会的、公的、私的な努力に模範的な貢献をした個人」に贈られるもので、アメリカの数ある勲章の中でも、文民に贈られる最高位の勲章です。
●この本には、幼少の頃から2020年までのサッカー選手としての活躍はもちろん、自由なファッションや恋愛のこと、さらには男女同一賃金やLGBTQの権利を求め、人種差別反対を表明し……と、信じるところを突き進み、そのたびに話題になってきた道のりの〝表と裏〟が包み隠さず描かれています。じつは多くの挫折を繰り返してきたことも正直に書かれています。
●サッカーに詳しい人もそうでない人も、この自伝を読むうちに、自分に正直に生きることがどんなに気持ちいいものか、また、他人のために声をあげることが、自分にとってもどれほど大事なのかをひしひしと感じるのではないでしょうか。
そして、USAトゥデイ紙が評したように「本書を読んだ人は、ラピノーと同じように、腕を大きく広げ、強い意志をもって、誰にも束縛されない自分のスペースを勝ちとろう、という気持ちになる」のではないでしょうか。
日本でも多くの女性が腕を広げはじめることを願っての邦訳版刊行です。お手にとっていただけたら幸いです。
◆書誌データ
書名 :ONE LIFE ミーガン・ラピノー自伝
著者 :ミーガン・ラピノー著
訳者 :栗木さつき訳
頁数 :292頁
刊行日:2022/6/30
出版社:海と月社
定価 :1760円(税込)
慰安婦
貧困・福祉
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