女性やLGBTQの写真家、現代美術作家たちはどのように社会と対峙したか。学芸員として、日本の美術界におけるジェンダー表現を世に問い続けたパイオニアである著者のテキストをまとめ、大好評を得た『ジェンダー写真論 1991-2017』(2018年刊)が、リニューアルしました。

増補版にあたり、九〇年代当時、すでにフェミニストとして発言し、キュレーション、評論活動をしていた笠原美智子と、「女の子写真」として作品が消費され、センセーショナルな話題を呼んでいたアーティスト・長島有里枝はなぜ当時、出会い、互いの仕事に触れ、手を取り合うことができなかったのか。

約三〇年の時を経て、二人が改めて当時を振り返り、語り合う機会を得ました。この記念碑的対談「なぜ、私たちは出会えなかったのか。」他、新たな論考や自らの身体の痛みと美術界への本音を綴るエッセイ他、100ページほど追加した大充実の増補版です。

「ある人がかつてわたしに、フェミニズムとは究極的には『愛』なのではないんかと語ってくれたことがある。それぞれの多様さ、曖昧さを引き受けながら、いかに理解し合えるか」

目次
海外篇 民族とセクシュアリティ
■セルフ・ポートレイトで既存の女性イメージを解体する
■ダイアン・アーバス小論︱ふたつの眼差し 父なるものの影
■病と老いを克服する写真︱視線のポリティクス ジョー・スペンス/ハンナ・ウィルケ
■〝ヌード写真〟から身体を回復せよ
■エイズをめぐる表象
■人種、階級、セクシュアリティとジェンダー
■アナ・メンディエタが示した多文化アメリカの表現の可能性
■インドの変化し続ける写真家、ダヤニータ・シン
■愛について アジアン・コンテンポラリー

国内篇 戦後と高度経済成長とジェンダー
■石内都作品に見る戦後日本の「記憶」
■日本現代美術における女による女のセクシュアリティ再考
■やなぎみわ作品に見る現代日本女性の意識
■わたしたちの身体はまだ〝戦場〟のままか
■森栄喜の拡大家族
■「失われた二〇年」と女性写真家の表現
■囚われの荒木 荒木経惟
■岡田裕子の愛と孤独、そして笑い
■イケムラレイコの少女
■映里ー扉を開く〝セルフ・ポートレイト〟

第一版あとがき

■対談 長島有里枝×笠原美智子「なぜ、わたしたちは出会えなかったのか。」
■愛と痛みの日誌 2020.11-2022.6

◆書誌データ
書名 :ジェンダー写真論 増補版
著者 :笠原美智子
頁数 :520頁
刊行日:2022/8/25
出版社:里山社
定価 :3080円(税込)

ジェンダー写真論 増補版

著者:笠原 美智子

里山社( 2022/08/25 )