『ザ・空気』3部作で知られる人気劇作家・永井愛さんと、「ご飯論法」の考案者でもある国会ウォッチャー・上西充子さんが対談したら、どんな話が飛び出すでしょう。「劇場型政治」という言葉があるように、政治を演劇的視点から見ることで、明らかにされることは少なくありません。そこで、劇作家と学者という言葉のプロがタッグを組み、いま起きていることを掘り下げてみたところ、そこで明らかにされたのは、民主主義が逆戻りしているという事実でした。
国会審議や記者会見での意図的な隠蔽や論点ずらし、連発される「お答えを控えさせていただきます」という答弁など、もやもやは募る一方ですが、それらの根本にあるものを、息の合ったやりとりを通して言葉で表現していく。それこそが本書の魅力です。
もうひとつ特色があるとすれば、おふたりが女性の視点から語っていること。菅義偉官房長官の記者会見で続けられた女性記者への質問妨害、政治に関する呪いの言葉、伊藤詩織さんの民事訴訟、ハッシュタグで連帯を示したMeToo運動などが取りあげられています。
言葉をめぐる現在の状況にこだわって対話を続けることにより、いくつかの展望も見えてきました。どのような言葉が生きた言葉としての力を持つのかに注目すること、さらには、わたしたち自身が言葉を通して問題を解きほぐしていくことが、未来につながっていきます。そのような結論にいたる過程のなかに、問題解決のための種を見つけていただけたらと思っています。
目次
はじめに 永井愛
第一章 日本人にとっての言葉
第二章 「見る」ことが、「見られる」人を変える
第三章 議論にならない政治の言葉
第四章 消されていく記録
第五章 なぜ報道は伝えられないのか
第六章 国会を見ることの意味
第七章 呪いの言葉とハラスメント
第八章 東京オリンピックと新型コロナ
第九章 わたしたちにできること
第十章 メディアをうらむな、メディアをつくれ
おわりに 上西充子
◆書誌データ
書名:言葉を手がかりに 見ること、伝えること、考えること
著者:永井愛、上西充子
ページ数:224ページ
刊行日:2022 / 8 / 26
出版社:集英社クリエイティブ
定価:1760円
2022.09.22 Thu
カテゴリー:著者・編集者からの紹介
タグ:本