「知性に性の区別なし」──17世紀のデカルト主義者プーラン・ド・ラ・バールはこう告げて女性が男性と同様にあらゆる分野で活躍する社会に期待しました。
 でもデカルトの母国フランスでは、20世紀初頭になっても、二度目のノーベル賞の栄誉に輝いたマリー・キュリーでさえ、科学アカデミーの会員にはなれませんでした。
 科学革命は、歴史の表舞台から女性を排除しながら進展したのです。

 自然哲学者・著述家マーガレット・キャヴェンディッシュ、物理学者・著述家エミリ・デュ・シャトレ、画家・昆虫学者マリア・シビラ・メリアン、天文学者キャロライン・ハーシェル…… アカデミーから排除されながらも、後世に残る仕事を残した才気あふれる女性たちに光を当て、科学の価値中立神話をジェンダーの視点から突き崩した記念碑的著作。
 長らく品切れ状態が続きましたが、このたび訳文、レイアウト、邦訳文献などを全面的にヴァージョンアップした改訂新版として蘇りました。

 帯に「知性に性の区別なし?」と掲げたところ、もはや当たり前のことなので「?」は取って欲しいとのSNS上の反応がありました。初版時の30年前に比べて頼もしい限りですが、その事実が社会制度にまで反映されているかといえば、「道遠し」といったところが現実。
情けない日本の実情を変えていくための底力を養うためにもお薦めの一著です。

◆書誌データ
書名:『科学史から消された女性たち』改訂新版
著者:ロンダ・シービンガー
訳者:小川眞里子・藤岡伸子・家田貴子
頁数:416頁
刊行日:2022/9/16
出版社:工作舎
定価:4180円(税込)

科学史から消された女性たち 改訂新版

著者:ロンダ シービンガー

工作舎( 2022/09/16 )