
自然の声に耳を澄ませ、環境保護に道をひらいた作家の伝記絵本
今から60年前、環境問題のベストセラー『沈黙の春(Silent Spring)』が出版されました。著者はレイチェル・カーソン。アメリカの海洋生物学者であり、作家です。
この伝記絵本は、夜明けとともに、鳥たちのコーラスをきこうと外にかけ出していくレイチェルの少女時代から始まります。自然の声に耳をすませ、その不思議さに目をみはる日々。大人になると、海洋生物学者として働き、海の本を書くチャンスをつかみます。海や海の生きものの様子を科学の目で生き生きとえがいた3冊は、多くの人々に愛読されました。
しかし、あるとき、自然が声を失い始めたことに気づきます。ここから作品のトーンは一変します。レイチェルはできるかぎりの調査にとりくみ、殺虫剤などで大量につかわれている化学薬品が、生きものの命を危険にさらしているという事実を突き止めるのです。
科学の力が過信されていた時代に、勇気をもって発表した『沈黙の春』は、社会全体の考え方をがらりと変え、のちの環境保護に道をひらきました。
作者シソンは、レイチェルの人生を、絵本の短いテキストのなかに端的に表現しました。ふきだしやコマ割りを用いた絵のタッチは柔らかく、弾むように軽やかです。さまざまな声で鳴く鳥たちや、レイチェルの家のようす、見返しにはお母さんと自然に親しむ姿なども描きこんでいます。
巻末には、作者と監修者のことば、レイチェル・カーソンの著作、伝記・読み物、大人向けの補足情報なども含まれています。
監修の上遠さんが書かれているように、地球はたくさんの生きものが支え合ってくらす素晴らしい星だということを、森や野原を散歩しながら、レイチェルはお母さんから教わりました。
初めてレイチェルを知る子どもたちや、大人の方にも、レイチェルと、レイチェルが愛した世界、生涯をかけて伝えたかったことを感じていただけたら幸いです。
◆書誌データ
書名 :レイチェル・カーソン物語 なぜ鳥は、なかなくなったの?
文・絵:ステファニー・ロス・シソン
監修:上遠恵子
訳:おおつかのりこ
頁数 :38頁
刊行日:2022/10/4
出版社:西村書店
定価 :1815円(税込)
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