
大地から問いかけ、共に生きる未来を展望する
北海道ジェンダー研究会は、北海道に居住したことのある人文社会科学の研究者らによって構成される団体であり、ジェンダー問題について研究し、発信することを続けている。本書は、北海道という独特な地域、すなわち、開拓以来の歴史が短く、隣接県をもたず、179の市町村を抱え、経済的に豊かとはいえない地域に焦点を当て、8名の執筆者が各々の専門的立場から、分析と提案をおこなう。章題等は、次のとおり。
第Ⅰ部「北海道から男女平等を求めて」では、北海道に入植し、荒々しい大地に息づいた女性たちのたくましさを描き出す。ここに含まれるのは、第1章「北海道の民俗としてのジェンダー関係における『姉の力』考」(林美枝子)。
第Ⅱ部「北海道に生きる女性のライフヒストリー」では、インタビュー調査における語りから、職をもち、子を育てる女性たちの忙しさとしなやかさを見出す。ここに含まれるのは、第2章「地域に暮らした女性たち―定山渓温泉と芸者文化」(妙木忍)、第3章「女性教員のキャリアと性別職務分離のメカニズム―北海道の小学校に勤務する女性教員へのインタビューから」(高島裕美)、第4章「ある母と娘の職業経歴にみる女性モデル―職業移動と適応のプロセス」(加藤喜久子)。
第Ⅲ部「北海道における女性支援体制」は、子育て家庭を支援する地域・行政の試行錯誤から、今後の課題を提示する。ここに含まれるのは、第5章「北海道の都市部における少子化・子育て問題と地域子育て支援の取り組み―札幌市と千歳市の事例にみる現状と課題」(工藤遥)、第6章「母子生活支援施設の役割と課題―北海道の母子生活支援施設における調査より」(吉中季子)。
第Ⅳ部「北海道から旧弊を打ち破る」は、北海道にて傷つけられた性や身体を直視し、ふたたび傷を負わせないための方策を示す。ここに含まれるのは、第7章「堕胎の刑事規制と優生思想」(岡田久美子)、第8章「当事者参画によるGBV(ジェンダーベイスト・バイオレンス)根絶施策の展開―北海道モデル」(近藤恵子)。
北海道における女性たちの生き様、ジェンダー・ギャップからくる問題の様相と公共的対応、未来へ向けた課題を示し、共に生きる社会を展望していく。
(札幌学院大学教員)
◆書誌データ
書名 :ジェンダーで読み解く北海道社会――大地から未来を切り拓く女性たち
編者 :北海道ジェンダー研究会編
頁数 :264頁
刊行日:2022/10/20
出版社:明石書店
定価 :3520円(税込)
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