
著者は50数年に渡ってたくさんの家事事件や女性差別事件に携わってきたベテラン弁護士。
弁護士としての実務実体験に基づいた切り口は読みやすく、事例を身近に感じながら読み進めることができる。
「これって女性だから(男性だから)?」
「母親だから?」
心の深いところにいつの間にか染みついているジェンダー意識は一体どこからきているのか。
親世代、そのまた親世代そのまた…と遡り、家族や社会から無意識に「こうあるべき」と受け継がれているものの背景と本質を本書から学び、自分の中に巣食っているものを改めてとらえ直すことができる。
「家父長制」という言葉で知られる明治民法による家制度の中で男性中心の社会が、時の政府の政策で形づくられ、軍国主義を支えるイデオロギーになったこと。「戸籍」についても、家族制度の名残だということを知る。
本書には歴史・多文化的に形成されたジェンダーを、日本国憲法を手がかりに「おかしさ」に気づき、自ら声をあげるための基礎知識が丁寧にまとめられている。
学校では教えてくれない歴史、法律の側面から多くの視点と勇気を与えてくれることは間違いない。
また、著者自身も弁護士として、ひとりの女性として、たくさんの困難な局面に立たされてきた。どう受け止め、乗り越えてきたか、その経験談も随所に書き込まれてあり、読みごたえがある。
ジェンダーの事を知ることは自分自身を理解し大切にすることに、ひいては人を大切にすることにもつながる。
自立した幸せとは何かを見つめ直すきっかけになる1冊である。
◆書誌データ
書名 :ジェンダー平等社会の実現へ-「おかしい」から「あたりまえ」に
著者 :杉井静子
頁数 :320頁
刊行日:2023/2/1
出版社: 日本評論社
定価 :2640円(税込)
慰安婦
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