厚生労働省の子育て支援事業「ファミリーサポートセンター事業」は最低賃金未満の報酬で大事なお子さんを預かるというもので問題ではないだろうか。具体的に問題点を以下に提示したい。
・全自治体のファミリーサポートセンター事業の報酬を調査したが、最低賃金未満が続出。
・普通の労働者の労働時間は9:00-17:00(8時間)が基本時間で、それ以外は残業時間で割増賃金になるのに、ファミリーサポートセンター事業における基本の活動時間帯(一番報酬が安い時間帯)が7:00-19:00など、普通の労働者よりも基本活動時間が幅広く設定されている。また、一日の活動時間の上限を決めている自治体も少ない。これは、長時間の活動もできてしまうということ。活動条件だけ見れば、普通の労働者よりも悪条件であると言える。確かに、子どもを長時間預かってもらって、仕事・リフレッシュなどしたい親もいるのは理解できるが、労働基準法以上の長時間の活動もできてしまい、最低賃金未満で預かるのは問題。 ・早朝、深夜まで活動できるような設定になっているのに、最低賃金未満の報酬なのも、普通の労働者の働き方と比較しておかしい。「上記以外の時間」と記載があるのは早朝・深夜も含むということ。22:00や23:00まで活動できる設定のところもあるが、最低賃金未満はおかしい。
・ファミリーサポートセンター事業はお子さんを預かる会員さん一人でお子さんを預かる(原則一人だがきょうだいなど二人以上も可能な自治体も多い)。責任も重大。保険加入しているとはいえ、責任の重さから最低賃金は保障すべきではないか。何かあった時に、「最低賃金未満でボランティアの位置づけだから仕方ないでしょ?」と言われても誰が責任を取るのか。アルバイト相当の報酬(最低賃金以上)にはするべきではないか。
・ファミリーサポートセンター事業のボランティアがうつぶせ寝の危険を知らずに死亡事故を起こしたとネットで知った。保険加入はしていても、取り返しのつかない事例だ。研修もきちんと義務化し定期的に行ない専門性を高め、最低賃金以上の賃金を保障するべきではないか。
<参考>
ファミリーサポートセンターの問題点。赤ちゃんの命を最低賃金で預かるべきか。(榊 裕葵 社会保険労務士) : シェアーズカフェ・オンライン (sharescafe.net)
・必ず仕事があるわけではないことは、アルバイトと一緒なので理解してもらって活動すれば良い。
・アルバイトも自己都合などで断れる。1対1の塾講師などは相性が悪ければ変えられる。講師の都合が悪ければ時間変更か講師変更を相談される。同じようなシステムにすれば良い。
・最低賃金未満のボランティアを子育ての隙間を補う重要な位置づけにすることに疑問を持つ。
・ファミリーサポートセンター事業は厚生労働省の事業。最低賃金を決めている厚生労働省の事業が最低賃金未満の事業を所管しているのは問題ではないか。最低賃金を上げる議論同様、毎年、ファミリーサポートセンター事業の報酬も上げる議論をして、最低賃金改定と共に報酬改定をするべきではないか。
・そもそもボランティアでやるべき事業なのか。ボランティアで回している時点で子育てに対する国と自治体の本気度がゼロだと言っているようなものだ。また、報酬を上げれば子育て世帯である利用者負担が増える懸念もあるだろう。子育て負担をできないような所得水準に子育て世帯を追い込んだのは国の責任である。きちんと補助金を所得に応じて出す、一定額を子育て世帯に補助するなど助成金を充実させるべきではないか。
・少子化問題は一丁目一番地ではなかったのか。ファミリーサポートセンター事業の最低賃金未満の報酬、保育士の低賃金問題。教員の過労死ライン長時間労働問題。子どもをケアする人たちの待遇(賃金・報酬面と働き方)をまず改善して、良い人材が保育・子育て支援・教育に携われるようにするべきではないか。
・女性労働協会にファミリーサポートセンターが掲載されている。こちらに掲載=労働者として扱うべきでは?
・一般財団法人女性労働協会にファミリーサポートセンターについて紹介があるが、提供会員(子供を預かる会員)を一般労働者より低い最低賃金未満の報酬でお願いするのはどうなのだろうか。女性は男性よりも日本ではまだまだ平均賃金が低い。だからといって、子育て中の女性就労を支援する事業まで最低賃金未満の低報酬で良いとはならない。ここは、行政がきちんとお金を出して、提供会員の報酬を最低賃金以上に設定すべきではないか。(女性労働協会に「ファミリーサポートセンター事業が最低賃金未満は問題だ」とメールしたところ、「厚生労働省に伝える」との回答だった)
・民間は利用料金が3000円/時くらい。ファミリーサポートセンター事業は民業圧迫になる水準ではないか。
 例)ポピンズナニーサービス:利用料3080円/時(スタッフ時給1320円/時~)
   キッズ&ベビーシッターサービス:利用料3630円/時(スタッフ時給1041~2000円/時)
   ベビーシッターのHAS:会員価格利用料2640円/時【入会金・年会費別途必要】
(スタッフ時給1100円/時~、1200円/時~)

全時間帯報酬が最低賃金以上の市町村:16市町村(←やろうと思えば最低賃金以上の報酬にできる)
・長崎県大村市1700円~2100円(最低賃金853円)
・佐賀県嬉野市900円~1100円(最低賃金853円)
・福岡県豊前市1000円(最低賃金900円)
・福岡県上毛町1000円(最低賃金900円)
・愛媛県松前町1000円~1200円(最低賃金853円)
・愛媛県宇和島市900円~1000円(最低賃金853円)
・静岡県小山町944円(最低賃金944円との差額を町が交付)
・静岡県御殿場市944円(最低賃金944円との差額を市が交付)
・山梨県山梨市900円~1100円(最低賃金898円)
・福井県福井市990円~・1020円~(最低賃金888円)・福井県あわら市940円(最低賃金888円)
・北海道上士幌町1000円(最低賃金920円)・北海道中札内村1000円(最低賃金920円)
・鹿児島県和泊町1000円(最低賃金853円)
・福島県只見町1000円(最低賃金858円)
・長野県辰野町1000円・1200円(最低賃金908円)

民間並みの高報酬
三重県熊野市宿泊:5000円/時

最低賃金の半分未満の市町村(宿泊は除く):25市町村
神奈川県小田原市350円(最低賃金1071円)・東京都足立区500円(最低賃金1072円)
北海道本別町400円(最低賃金920円)・秋田県大館市300円(最低賃金853円)
秋田県鹿角市275円・325円(最低賃金853円)・山形県寒河江市300円(最低賃金854円)
山形県天童市400円(最低賃金854円)・福島県平田村400円(最低賃金858円)・
福島県会津美郷町の送迎400円(最低賃金858円)・新潟県関川町300円(最低賃金890円)
富山県氷見市400円(最低賃金908円)・富山県朝日町400円(最低賃金908円)
長野県信濃町400円(最低賃金908円)・長野県飯綱町の送迎300円(最低賃金908円)
茨城県阿見町400円(最低賃金911円)・岐阜県恵那市400円(最低賃金910円)
山梨県富士川町400円(最低賃金898円)・愛知県犬山市400円(最低賃金986円)
三重県紀宝町400円(最低賃金933円)・兵庫県西脇市400円(最低賃金960円)
長崎県平戸市350円・400円(最低賃金853円)・熊本県和水町300円・350円(最低賃金853円)
熊本県南関町300円・350円(最低賃金853円)・宮崎県延岡市300円・400円(最低賃金853円)
熊本県南小国町300円・400円(最低賃金853円)

改めて活動上の問題点を確認したい。
・早朝、深夜も全ての時間帯で最低賃金未満の報酬で活動させている自治体が圧倒的に多い。
・一番安い報酬である基本時間の設定が、普通の労働者(9:00-17:00)よりも長く設定されている(7:00-19:00など)
・普通の労働者なら完全にアウトである活動内容ではないか。もし、民間の会社がアルバイト募集でファミリーサポートセンター事業のような最低賃金未満の時給で働いてもらったら、完全に労働法上違反である。民間業者がやったらアウトであることを自治体が平気でやっていることは問題ではないか。有償ボランティアと言っても、利用者の時間に合わせるのであり、自分から時間は選べない。好きな時間に活動するボランティアとは違う。国の大事な政策として少子化に立ち向かうのであれば、善意やボランティアなどに頼らず、きちんと予算を組んで、助成金を出し、ファミリーサポートセンター事業をアルバイト待遇に格上げすべきではないか。
・年度更新になっているので更新時に報酬を最低賃金に合わせて改定することも可能であるのに、やっていない。
・外国人技能実習生が最低賃金未満の低賃金で働かせられ放題と問題になったが、ファミリーサポートセンター事業も、最低賃金未満で募集して、最低賃金未満で活動させて、普通の労働者より長い時間活動できてしまい、問題ではないか。こんな労働環境の悪い事業が国の事業で良いのだろうか。
・ファミリーサポートセンター事業も自治体や国がやっている事業だから安心と預かったり、預けたりする。でも、最低賃金未満で子どもを預け預かり、業務委託形態なのに、「ボランティア」という名目で最低賃金未満である。子供を預かる提供会員は時間を具体的には選べないし、場所も選べない。「何時にご飯を食べさせて」「バスを使って帰宅して」など、親の指示に従っての行動が要求される。約束の時間になっても親が帰宅しなければ、親が帰宅するまでお子さんを預からなければいけない(時間だからと、勝手にお子さんを置いて帰宅することはできない)。万が一、地震でも起こって、親が帰宅できない状態になれば、自宅で一晩、預かる可能性だってある。なのに、ボランティアはない。ファミリーサポートセンター事業はボランティアではなく業務委託であり、最低賃金の対象ではないか。

労働基準法
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
第十条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

厚生労働省のホームページより抜粋
【最低賃金制度とは】
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
(参考)
最低賃金法(昭和34年4月15日法律第137号)(抄)
第4条第1項
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
 〃  第2項
最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

ファミリーサポートセンター事業はアルバイトと同じ働き方だ。事業主はファミリーサポートセンター事務局、使用者は利用会員。お子さんを預かる提供会員はアルバイト(労働者)と変わらない。最低賃金未満の報酬は労働基準法にも最低賃金法にも違反している。「委託業務」に労働形態は近く、同業他社にも同じ形態の保育サービスはあるが、最低賃金以上の時給を支払っている。
業務委託と言っても、勤務時間や場所の拘束があったり、報酬が時間単位で算出されていたり、職務に対する命令、指示を受けていたり、仕事への評価や指導を受けている場合は労働基準法の対象になるとネットに記載があった。勤務時間・勤務場所は利用会員からの指示があり、報酬は時間単位で算出されている。職務に対する命令、指示(何時にご飯を食べさせて、何時にどこに迎えに行って、交通機関はバスで、など)を受けている立場だ。労働基準法適用でない方がおかしい。

*ファミリーサポート事業では育児援助提供希望者を提供会員、援助利用希望者を依頼会員と呼びます。