
● 少女S (=幼い頃の筆者)が抱え込んだ疑問の数々
「女のくせに」「女が勉強して何になる」「女の務めは嫁に行って子を産み育てること」周囲に充満する言葉の洪水に反発し、悩み苦しみながら、結局挫折する。
本書は、そんな少女Sに向かって、「あなたの疑問はこういうことだったのね」、「あなたはこんなことで苦しんでいたのね」、と語りかける。78年の人生と思いを込めて。
少女Sの疑問は多岐にわたり、その一つひとつに応えるために手当たり次第に本を読みながら、筆者は次第に男女格差の問題を、人類の進化の過程から捉えてみたいと感じ始める。そして、「人類のふるさとアフリカに行ってみたい」と思うようになった。
● アフリカ旅行から見えてきた世界と着想―新たな「仮説」創造への誘い
社会的立場を持たない筆者は、ツアー会社の企画する観光旅行にのせてもらうしかなかった。しかしそのことが、返って化石発掘地に限定されずに、とりわけ移動時の上空や車窓から、広範な地域を眺めることを可能にした。前後6回にわたるアフリカ旅行で脳裏と写真に焼き付けた光景と、テレビ・ネット・地図などから得た情報から、アフリカ大陸の全貌を直感的に把握することが出来たことは大きい。
それらの蓄積の中から、人類の直立二足歩行開始の場が浸水林地帯にあること、短毛化のステージがアルカリ湖畔にあること、などの発想が生まれ、イメージを膨らませ、仮説を提示することが出来たのである。
● 人類史の視点から、男女格差の由来と解消への道を提示
筆者は、幼い頃の疑問に答え、雑学のつまみ食いをしながら、女性の視点から直感的な仮説を立て、可能な限り雑学を寄せ集めてその仮説の証明を心がけた。不思議なことに、男性目線の通説に対する女性目線での仮説の対峙は、結果として男性目線・女性目線の枠を外して、男女格差の問題を総体的に把握し、それを両性共通の課題として提起することを可能にした。
本書の最大の魅力は、男女格差を人類史の視点から科学的に提示したことである。それを、男女格差解消のための触媒として生かして頂ければ、それに勝る喜びはない。
筆者は、悩み苦しみ、悔しい思いをしている現在の女性にも、幼きSに対してと同じ言葉で語りかけたい。「貴女を苦しめている根源は、ここにあるのよ」、「目先のアンコンシャス・バイアスに惑わされてはだめよ」、との思いを込めて、本書を手渡したい。
◆書誌データ
書名 :『人類進化の傷跡とジェンダーバイアス』
著者 :横田幸子
頁数 :312頁
刊行日:<2022/7/29
出版社:社会評論社
定価 :円(税込)
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