
衆・参両院の補欠選挙から市長選挙、市区町村議会選挙と、いくつかの選挙が終わりました。今回の選挙のまとめの見出しでは自民党の辛勝と、維新の進出が大きな字で躍っています。
これを女性の側から見るとどうなっているでしょうか。何が見えるでしょうか。選挙や地方政治に全く素人ですが、それぞれの単位の選挙の結果を、わたしなりに見て考えてみます。
政治の場に女性の数が増えればそれでいいということでもないし、女性であれば誰でもいいというわけではないのですが、なんといっても政治分野でのジェンダーギャップ指数が最低の線を低迷している現在では、とりあえずは数を増やすのも必要です。それで、ここでは、それぞれの女性の考え方や政策、所属政党などについては問わないことにして、今回はひたすら数を追っていくことにします。なお、候補者・当選者の中にはトランスジェンダーの方々も含まれていることは承知していますが、ここでは報道された情報をもとに、従来の二分法によって性別を見ていくことにします。
衆・参両院の国会議員の補欠選挙は、千葉5区など5つの選挙区で争われました。その結果、千葉5区で英利アルフィヤさん、和歌山1区で林佑美さん、参院大分選挙区で白坂亜紀さんの3人が当選しました。5選挙区のうち3区で女性が勝利を収めたのですから、勝率60%ということになります。ここだけみるとすごい躍進ですが、全体の議員数の中にこの3人を入れてみるとどうなるでしょう。先の衆議院議員選挙で選ばれた女性は45人、全体の9.7%でした。今回2人増えて47人、10.1%となり、辛うじて2桁に上ったというところです。なお、参議院議員中の女性比率は23.0%から23.5%と0.5%上がりました。
市区長選挙も多くの市や区で行われました。その中の政令指定都市は札幌市、大阪市など6市で行われました。この6市の選挙に立候補したのは21人、そのうち女性は4人、男性は17人で、当選したのは全員男性でした。候補者数も少ない女性の中から市長は生まれませんでした。全敗です。
その他の市は、北は函館市から南は熊本の人吉市まで88市で改選が行われたのですが、そのうち24市では現職の市長1人だけが立候補して無投票で当選しました。つまり24人の市長は選挙なしで続投ということになりましたが、その24人のうち、女性の市長は、長野県の諏訪市長だけでした。23人の市長は無投票で選ばれた男性でした。
この88市の市長選の候補者を全部合わせると172人で、そのうち女性は25人、14.5%でした。この25人の女性のうちで当選したのは、諏訪市を含めて山口県周南市、三重県鈴鹿市、兵庫県明石市、東京都東大和市、埼玉県行田市の6市長のみです。全市88市のうちの6.8%で、候補者の比率よりもずっと低い数値になっています。男性の候補者は85.5%でしたが、市長になったのは全市の93.2%で、女性側より効率の良い結果となっています。また、これらの市の市長選に挑戦した女性の分布は、地域的に大きな偏りがあります。埼玉、千葉、東京、兵庫、大阪府などのいくつかの市では女性の候補者がいて当選者も出ていますが、北海道では11市でわずかに1名、愛知と岐阜の10市ではゼロ、九州では8市のうち1名しか候補者がいないという寂しさです。立候補して選ばれなければ市長になりようがないので、まず女性が立候補することが求められます。
次は東京の特別区23区のうちの11区での区長選挙です。区長選については、昨年7月のこの欄でも、私の住む杉並区長の選挙で初めて女性区長が誕生したことを報告しましたので、その続編ということになります。
文京区、渋谷区など11区の区長改選の選挙でしたが、立候補者総数は32人、女性は14人で43.8%、男性は18人で56.2%です。このうち江東区.豊島区、北区の3区で女性が区長に選ばれました。これまで女性の区長が誕生したのは2002年の新宿区長が初めてで、現在は杉並区長と足立区長と品川区長の3人だけ、そこに新たに3人が加わることになったわけです。東京の特別区といえば世田谷区のように90万人以上もの人口を抱えていたり、練馬区や大田区のように70万人を超える住民を擁している大きな自治体です。都道府県の中の人口の少ない県よりはるかに人口が多く、都道府県の知事に相当するほどの力量が求められる職です。その重責のあるポストに、23区中の6区長、26.1%に女性が就くことになったことは、まず喜びたいことです。もちろん、26%ではまだ十分ではありませんが。
そして最後は市区町村の議会議員選挙です。地方自治体の議会議員は私たちの生活にいちばん密接につながるものですが、市町村議会の中には女性ゼロの議会もあります。今年3月の内閣府男女共同参画局の報告で、議員がゼロの市町村が275あったのですが、今回の選挙で、その中の静岡県熱海市は15人中1人、下田市は13人中2人、松崎町は8人中1人の議員が誕生して、ゼロ議会の汚名を返上しました(東京新聞デジタル版4月26日)。
ゼロがやっと解消されたところもあれば、もっとうれしいことに女性議員が過半数に達した議会もあります。兵庫県の宝塚市では14人の女性議員が誕生して、議員定数26人の過半数を占めることになりました。しかも、立候補した女性16人中の14人が当選、87.5%というすごい当選率です。非常に要領よく女性たちは選挙を戦ったのですね(毎日新聞4月24日)。ほかに、埼玉県の三芳町でも定数15人のところ、女性が8人当選して過半数を占めました。
さらに、ちょっと自慢になりますが、わたしの住む東京杉並区の区議会議員は48人の定数のうち25人、52.0%を女性が占めました!! 女性候補者は30人でしたから、83.3%という高い当選率。男性は39人の候補者のうち23人当選して、その率は59.0%でした。しかも、女性は上位当選者が多く、1位から4位までが女性でした。20年ほど前に区議をした友人が言っていました。「議会で女性区議が質問などしようものなら、おじさんたちの汚いヤジがうるさくてたいへんだった」と。もうその心配はありません。黒や茶色のスーツの黒々とした議場から、一転して、赤やピンクや水色と多彩な色で埋まる華やかな議場に変身すると思うと、ぜひ区議会傍聴にも行こうという気になります。
この選挙には、わが岸本区長も駅頭に立って、女性候補への支援を呼びかけていました。区長が変わると、議会も変わることを目の当たりにしています。すぐに何もかもよくなるはずはありませんが、女性の区長になってよかったことは確かです。
他の多くの自治体でも女性の首長を生み出してほしい、これが素人わたしの統一地方選挙の総括です。
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