『別冊NHK100分de名著 フェミニズム』


2023年1月2日。この日、『100分de名著』は、通常の4回シリーズではなく100分間連続のスペシャルとして放送された。2023年新春を飾る「フェミニズム」の文字。

『100分deフェミニズム』担当ディレクター 山田あかねさんは言う。『今からでも遅くない。「女であること」を基点にして、フェミニズムの番組をテレビで放送したい』と思いました。上野千鶴子さんが、東大最後の講義のとき、「テーマって何ですか?」という学生の質問に、「あなたの心をとらえて離さないものがテーマよ」と答えました。

上野さんは、自身が「女であること」をテーマに女性学を展開してきたといいます。「私の心をとらえて離さないもの・・・・女であることの生きづらさ、性暴力、これらと対峙してきたフェミニズムに正面から取り組みたいと思いました。」(はじめにp.3)

スタジオには、歴史学者・加藤陽子さん、教育学者・上間陽子さん、翻訳家・文芸評論家鴻巣友季子さん、社会学者・上野千鶴子さんが集結。各人が持ち寄った「伊藤野枝集」、「心的外傷と回復」(ハーマン)、「侍女の物語」「誓願」(アトウッド)、「男同士の絆」(セジウィック)を通してフェミニズムを読み解いていく。

私は新春スペシャルをオンタイムで見たが、本著には、番組で放送されなかった内容が加わりさらに充実させた一冊となっているという。これには正直圧倒された。名著に描かれた主題、本質を抽出して4人の論客が迫ってくる。文字となって迫ってくる。

番組では味わえなかった文字として目に入ってくるそれぞれのテーマは、まさしく心をとらえて離さないもの。
「野枝」が、「オブフレッド」が、「ハーマン」が語る。時空を超えて目前にやって来ているような感覚に陥る。
疑似体験がより繊細な感性を研ぎ澄まし、心を揺さぶってくる。「女であること」のテーマに傾倒。見つめ直してみたい。

■ 堀 紀美子 ■