「本日午前、西上関町長へご回答した地域振興策の内容、上関地点に使用済み燃料中間貯蔵施設の設置に関わる調査の検討について、これから説明させていただきたい」
8月2日の午前中に上関(かみのせき)町を訪ねた中国電力(以下、中電)は、午後になると記者会見をひらき、進行役と思しき男性がそう口火を切った。それはテレビ山口(tys)によってオンライン中継もされている。記者会見もオンライン中継も中電としては珍しいことではないか。少なくとも私は、そのような機会に初めて接した。
会見で伝えられた内容によれば、次のような経緯でこの日に至ったようだ。
<今年2023年2月。「上関原発建設の見通しが立たないなか、上関町は厳しい財政状況に立ちつつある。新たな振興策につながる施策を真剣に考えてほしい」と、西哲夫町長から中電に要請があった。
そこで検討した結果、中電が上関町の長島に所有する原発計画のための用地内に、使用済み核燃料の中間貯蔵施設(以下、中間貯蔵施設)を設置する検討を始めることが、(中電の)島根原発の安定稼働に資するうえ上関の地域振興に向けた新たな選択肢の一つにもなりうる、と考えた。
そこで、この日すなわち8月2日、上関町役場を訪れて西町長へ回答した>
私はしばし絶句した。原発の新設さえ40年余も拒みつづける地域に、原発を飛びこえて、原発で生じた核のゴミを持ってくるという。それだけで厚かましい話に聞こえるのに、あまつさえ地域「振興策」をかたるとは。核のゴミを、中間貯蔵の名のもとで仮置きするフリをして、放置する結果になるのでは……と危惧せずにいられない状況も度外視だ。
しかも、中電が現在までに確保した原発用地には鎮守の森も含まれる。かつて売却を拒んだ宮司が辞職願を偽造されて失職し、神社本庁が送りこんだ後任の宮司によって中電の所有となったその森は、魚付き林でもあると聞く。地域にとって、とても大切な大地だといっても過言ではないだろう。
そこをゴミ置場にする? こともあろうに、無毒化できない核のゴミの?
無神経なのだろうか。それが人の尊厳を傷つけ、神経を逆なでするとは思いもしないのか? ひょっとして、気づきつつ尚やっているのだろうか。
仮にそうならば、そうした業務に従事する人のメンタルは大丈夫かと不安も覚える。心を潰して業務にあたる企業戦士の家族も、やはりメンタルをやられるかもしれない。
予定地に近い八幡宮。地域の鎮守の森は、明治時代になって登記が必要となったとき、この神社名義で登記された。
中電はこの日、単独での建設運営は難しいから関西電力(以下、関電)との共同開発を前提に、具体的な計画の検討をしたいとも述べていた。関電は2015年に公表した使用済み核燃料の対策計画で、その対策が課題であると報告していたため、中電から話を持ちかけたそうだ。
関電といえば、大阪に本社を置く電気事業者である。その電源構成は原発の割合が高いが、すべて福井県の日本海沿いにあって上関まではかなり遠い。
その関電が? という疑問符と、あの関電が? という思いが交差する。2007年に上梓した『ためされた地方自治:原発の代理戦争にゆれた能登半島・珠洲市民の13年』(桂書房)という拙著は、原発予定地だった石川県珠洲市へ通った経験をもとにしている。珠洲原発は関西・中部・北陸という電力三社の共同プロジェクトだった。
ところで、そうした「回答」に対して西哲夫・上関町長は、議会へ報告して議員の意見を聞いた上で判断したいと応じた、と中電は述べていた。さらに「町の理解を得られれば、中間貯蔵施設の立地可能性調査に速やかに入りたい」と言うから、なにやら中電は前のめり気味である。
半年ほどの期間で「(上関原発の)建設予定地と敷地境界線の間において、文献調査、地表地質調査、ボーリング調査などを実施」するというが、「中間貯蔵施設の立地の手続きについては法律的に定められたものは特にない」、「仮に今回の中間貯蔵施設をつくるとなった時、どういうふうに手続きしていくかということは、これから並行して検討していきたい」など、気になる発言もあった。
記者会見は約1時間で終了した。(つづく)
中電の原発用地の案内図。
中間貯蔵施設の立地可能性調査エリアはこの周辺の内陸部と思われる。
中間貯蔵施設の立地可能性調査エリアはこの周辺の内陸部と思われる。
注1) このレポートの予告動画として、今回お伝えした8月2日から16日後、8月18日の上関町役場前の様子を3本に分けて公開しています。こちらもどうぞご参照ください。
その1:町内外の住民がまだ平穏に町長へお願いしている時間帯。
その2:途中から警察が現れて警告のち突入そして混乱…。
その3:機動隊により騒然とするなか、防御を固めた町長が車外に出て庁舎へ…。
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