女の本屋

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「<市井の人>のあの頃は」 『小さいおうち』中島京子

2012.02.29 Wed

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これはタキという女性が、かつてある家庭で女中としてつとめた日々を綴った物語だが。ノートを覗き読みする甥には、「過去を美化しちゃだめだよ」と責められる。甥にとっては「昭和十年」は美濃部達吉の弾圧される年であり、2・2・6事件の前年である。一方タキにとっては、5年後に東京オリンピックが開かれると信じて「ウキウキしていた」年、だった。「歴史」で昭和十年を学んだ甥と、当時を市井の人として生きたタキにはどこまでもずれがある。私達は戦争の辛さ、犠牲の多さを繰り返し学んできたけれど、渦中の人々がどう感じていたか、知識が邪魔して見えないこともあるだろう。そんな個人の体験にアクセスできる時、年表では届かない、フィクションの力を感じる。(Anna)








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タグ: / 戦争 / 小説