
私たちは人類が経験したことのない超高齢社会を迎えている。
『おひとりさまの老後』は、自分の親も、自分自身も経験する切実な問題。
2000年に介護保険制度ができ23年の月日が経つなか、年々制度は改悪を重ね、とうとう転換期にきているという。
そんな折、30年以上介護の現場に携わり、介護施設を立てなおしたり、新しい施設を一から作り上げてきた日本の「介護のプロ」と言われる髙口光子さんが、解雇された。
「そんな人物がいとも簡単に解雇されたという事実。これは、彼女個人の問題ではなく、時代の転換期だと直観的に感じました。」と上野さん。
「今回、彼女の話を聞いてわかったのは、介護保険制度の改悪によって、施設の現場も恐ろしいことになっているということでした。」(はじめにp.9)
上野さんと髙口さんの対談。
髙口さんの回顧から見えるもの、介護現場の実態が語られていく。読んでいるとそこには、想像を超える現実と明白な恐怖が展開される。
しばらく本を閉じ、また他のページから読み始めてもなおまた、おなじような怖さが漂ってくる。
『そもそも介護保険の戦略が欠陥だらけの上に、使える戦術も限られている中で、あなたは最前線で戦闘現場の指揮官を20年やってきた。これだけの欠陥と限界だらけの戦略・戦術の下でよく頑張ってきたと思う。
でもそれは、「木口小平は死んでもラッパを口から離しませんでした」という日露戦争のエピソードと同じ。大本営と軍隊を免責してしまうことが、私の髙口さんに対する不満でした。』(本文p.29)
制度改悪のなか踏みとどまり、できる限りを尽くして介護現場を立ち回った髙口さん。
対談を終え、髙口さんの見てきた事実は、おふたりの実践に基づく知識と摺り合わされ、明確な問題として浮き彫りにされる。
『老後の生きる・暮らす』を支える介護現場にいる人と介護保険制度を、まずは知ることから始めてみる。
そして自分にできること、声を上げて活動する。
人として生きる・暮らすにかかわる大切なことを考えながら生きること。
■堀 紀美子■
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