『PERFECT DAYS』
役所広司演じるトイレ清掃員、平山さんの物語。掃除の舞台は「ガチ公衆便所」ではなく、クリエイターがデザインした『アート』トイレばかり。そのプロモーションビデオ臭がプンプンする「大人の事情」が絡んだ映画だ。
役所さんは役作りのためプロの清掃員から2日間指導を受けた、と記事で読んだ。指導した方が「すぐ覚えて、シフトに入って欲しいくらい」と絶賛していた。私は「役所さん、さすがだなぁ〜!」と、その時はそう思った。
折しも私は最近、清掃の仕事を始めた。初日、先輩から指導を受けたが、午後にはもう「午前中のようにやって」と言われた。パートのおばさんが2日でトイレ掃除をマスターしても決して絶賛はされない。これが私の「パートの日々=PART TIMER DAYS」だ。
平山さんにはルーティンがある。朝起きて、植物に水をやる。(これは私も一緒。)缶コーヒーを飲みながら車で出勤。(私は、飲み物はマイボトル。なぜなら、お金がもったいないから。)昼食は、神社でコンビニのサンドイッチ。(私は、意地でも弁当を作る。なぜなら、お金がもったいないから。)そして、仕事が終えると銭湯、馴染みの店で一杯&夕食。(私は、ほとんど外食しない。なぜなら〜、以下略)就寝前に読書。
休日、コインランドリーで作業服を洗濯。(私は毎日洗濯。)趣味の写真を現像・受け取り、古本屋に寄り、締めは、ほの字の女将がいる小料理屋へ。(私の趣味は、映画。家には、イボ痔の夫がいる。)
劇中、丁寧に清掃をする平山さんに対して、後輩が「すぐ汚れるんだから」的なセリフを言うシーンがある。そう、日々の清掃とは彼の言う通り。私がキレイにしたトイレもすぐに元の木阿弥状態だ。
以前、私が事務職(これも非正規)として働いていた職場で、清掃員の方が数週間入院したことがあった。事務所内はジワリジワリ薄汚れ、特にトイレはひどかった。そして、次第に職場の雰囲気もすさんでいった。
掃除という仕事は、エッセンシャルワーク。うっかり忘れがちだが、人々の当たり前の生活を支えている存在がいる。
この映画、もし平山さんがおばさんだったら、こんなに美しく描かれ、人々に賞賛されただろうか。(私が日頃、目にする清掃員の多くは女性。)また、平山さんのルーティンは、ささやかだが、案外ちょこちょこお金がかかる。誠実な仕事ぶりに応じた十分な給料をもらえているだろうか。(ちなみに私の時給は最低賃金。)何より「清貧賛美」の圧が強く、色々モヤる。
ともあれ、この映画にいっちょ噛みした関係者、映画に感動した方、なんなら映画を観てない方も、この機会に、世のリアル平山さんたち(私を含む)へも賞賛を送って頂きたい。
最後に、全てのエッセンシャルワーカーの皆さま、本当にお疲れ様です。いつもありがとうございます。