2024年1月7日に開催された新春第1弾のブックトークイベントの記録・後半をお届けします。

【趣旨】1970年代のウーマンリブに端を発し花開いた第二波フェミニズム。『ニュー・フェミニズム・レビュー』はその成熟期――1990年から95年にかけて編まれた全6巻の雑誌スタイルの本です。
各巻の責任編集者は「恋愛」「性表現」「母性」などフェミニズムが当面したテーマを最前線で牽引した気鋭の論客たちでした。
30年余を経て改めて本シリーズの成果を振り返り、次の世代へとバトンタッチすると同時に今、フェミニズムの波頭で輝く川上未映子、田中東子のお二人に参加いただき、フェミニズムメディアの過去・現在・未来を語りつくします。

【日 時】 2024年1月7日(土)13:00~16:00
【場 所】 オンライン開催(Zoomウェビナー)

【主 催】 認定NPO法人ウィメンズアクションネトワーク(WAN)ミニコミ図書館
*今回取り上げる図書のご案内
『ニュー・フェミニズム・レビュー・全6巻』は、ミニコミ図書館で以下より読むことができます。
https://wan.or.jp/dwan/detail/8347

【プログラム】

<前半>
PART1 各巻編集者による「あの頃、そして今」
・上野千鶴子 第1巻・恋愛テクノロジー
・水田宗子 第2巻・女と表現
・白藤花夜子(藤本由香里) 第3巻・ポルノグラフィー
・樋口恵子 第4巻・エイジズム
・上野千鶴子 第5巻・リスキー・ビジネス
・池川玲子 第6巻・母性ファシズム

<後半>
PART2 『ニュー・フェミニズム・レビュー』を読んで
 川上未映子・作家
 田中東子・東京大学大学院情報学環教授
PART3 今こそ語ろう、フェミニズム・メディアの過去・現在・未来
 登壇者全員で討論


【登壇者プロフィール】*登壇順

◆上野千鶴子(うえの・ちずこ)
  社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長、上野千鶴子基金代表理事
富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。社会学博士。平安女学院短期大学助教授、京都精華大学助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学院大学客員教授等を経る。1993年東京大学文学部助教授(社会学)、1995年から2011年3月まで、東京大学大学院人文社会系研究科教授。2012年度から2016年度まで、立命館大学特別招聘教授。2011年4月から認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。
専門は女性学、ジェンダー研究。この分野のパイオニアであり、高齢者の介護とケアも研究テーマとしている。
『近代家族の成立と終焉』(岩波書店・サントリー学芸賞受賞)『生き延びるための思想』(岩波書店)『ケアの社会学』(太田出版)などのほか著書多数。最新刊に『「おひとりさまの老後」が危ない!』(共著・集英社新書)『八ヶ岳南麓から』(山と渓谷社)等がある。

◆水田宗子(みずた・のりこ)
(社)国際メディア・女性文化研究所代表・所長、前(学)城西大学理事長
英文学、比較文学研究者、女性表現・現代詩批評、詩人
1981年に刊行した『ヒロインからヒーローへ』(田畑書店)は、第二波フェミニズムの中で登場したフェミニズム批評における嚆矢となった。
『シルヴィア・プラス受難の女性詩人』静地社1980 『ヒロインからヒーローへ』、田畑書店1981 『フェミニズムの彼方』、講談社 『物語と反物語の風景』、田畑書店 『尾崎翠を探して』、新典社2005 『山姥たちの物語』。学芸書房2003 『大庭みな子:記憶の文学』、平凡社2013 『富岡多恵子:はぐれものの思想』、めるくまーる。2021 『白石かずこの世界:旅、いのち、性』、書肆山田、2021 『吉原幸子:秘密の文学』、思潮社。2023
詩集:『帰路』、『青い藻の海』、『影と花と』、『水田宗子詩選集』『うさぎのいる庭』『音波』(全て思潮社)ほか ジャーナル、雑誌編集:『フェミニスト』(渥美育子ほか)、Review of Japanese Culture and Society, USJapan Women’s Journal, 『比較メディア、女性文化研究』、詩誌『カリヨン通り』主宰

◆藤本由香里〈ふじもと・ゆかり ペンネーム・白藤花夜子〉
明治大学国際日本学部教授。専門は「ジェンダーと表象」と「漫画文化論」。
07年まで筑摩書房で上野千鶴子氏の著作などジェンダー系の問題を扱う編集者として働くかたわら、コミック・セクシュアリティなどを中心に評論活動を行う。
新聞や雑誌に連載コラムを持つほかメディア芸術祭マンガ部門・手塚治虫文化賞・講談社漫画賞などの選考委員を歴任。08年より明治大学へ。
もともとは少女マンガが専門だが、最近ではマンガの国際比較や海外市場調査、とくにBL等の表現の海外への広がりと現地のLGBTとの関係などの調査も行っている。
マンガ学会理事。
代表的な著書に『私の居場所はどこにあるの?』(学陽書房/朝日文庫)、『快楽電流』(河出書房新社)、『少女まんが魂』(白泉社)など。

◆樋口恵子(ひぐち・けいこ)
東京大学文学部美学美術史学科卒業・東京大学新聞研究所本科修了後、時事通信社・学習研究社・キヤノン株式会社を経て、評論活動に入る。
1970年代からの女性の地位向上運動のリーダーの一人として活躍。高齢社会の到来をいち早く察知し「高齢社会をよくする女性の会」を立ち上げ、介護保険創設に努力した。
内閣府男女共同参画会議民間議員、厚生労働省社会保障審議会委員、社会保障国民会議委員、消費者庁参与などを歴任。
現在、評論家、NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長、東京家政大学名誉教授、同大学女性未来研究所名誉所長。
著書は『大介護時代を生きる』(中央法規)、『老―い、どん!』(婦人之友社)、『老いの福袋』(中央公論新社)、『どっこい生きてる90歳』(婦人之友社)、『老いの地平線』(主婦の友社)など多数

◆池川玲子(いけがわ・れいこ)
日本女子大学学術研究員
1959年 愛媛県生まれ 45才で川村学園女子大学大学院に進学、若桑みどりに師事。敬和学園大学戦争とジェンダー表象研究会にて、加納実紀代の薫陶を受ける。専門は日本近現代女性史。
単著に『「帝国」の映画監督 坂根田鶴子 「開拓の花嫁」・一九四三年・満映』(吉川弘文館、2011年、青山なを賞)、 『ヌードと愛国』(講談社現代新書、2014年)。

◆川上未映子(かわかみ・みえこ)
大阪府生まれ。2008年『乳と卵』で芥川龍之介賞、09年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、10年『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞。 13年、詩集『水瓶』で高見順賞、同年『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、16年『あこがれ』で渡辺淳一文学賞、19年『夏物語』で毎日出版文化賞を受賞。
他の著書に『春のこわいもの』など。
最新小説は『黄色い家』。『夏物語』は40カ国以上で刊行が進み、『ヘヴン』の英訳は22年ブッカー国際賞の最終候補に選出された。23年には『すべて真夜中の恋人たち』が全米批評家協会賞最終候補にノミネート。

◆田中東子(たなか・とうこ) 東京大学大学院情報学環・教授。博士(政治学)(早稲田大学大学院)
専門分野はメディア文化論、第三波以降のフェミニズム、カルチュラル・スタディーズ。
1972年横浜市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科後期博士課程単位取得退学後、早稲田大学教育学部助手および助教、十文字学園女子大学准教授、大妻女子大学文学部教授を経て、現職。
第三波以降のフェミニズムやポピュラー・フェミニズムの観点から、メディア文化における女性たちの実践について調査と研究を進めている。
『メディア文化とジェンダーの政治学-第三波フェミニズムの視点から』(世界思想社、2012年)、『出来事から学ぶカルチュラル・スタディーズ』(共編著、ナカニシヤ出版、2017年)、『私たちの「戦う姫、働く少女」』(共著、堀之内出版、2019年)、『ガールズ・メディア・スタディーズ』(編著、北樹出版、2021年)、翻訳に『『ユニオンジャックに黒はない――人種と国民をめぐる文化政治』(ポール・ギルロイ著、共訳、月曜社、2017年)、『フェミニズムとレジリエンスの政治』(アンジェラ・マクロビー著、共訳、青土社、2022年)、『クリエイティブであれ』(アンジェラ・マクロビー著、監訳、花伝社、2023年)など。