
本書は2018年発行の著者の博士論文を一部省略し、翻訳した本である。主題を簡単に言えば、21世紀のアメリカにおける結婚と妻業、それにメディアがどう影響を及ぼしているかについてである。結婚、主婦、妻に関する番組やドラマなど、これでもかというほど具体例を示し、客観的に論じている。アメリカでの調査研究をまとめたもので、日本の状況に直接結びつくものではないが、日本における結婚を考えるきっかけとして興味深い。一読をお勧めする。
〖本書の概要〗
第1章「起業する妻たち」
オンラインデートおよびオンラインデートに向け「理想の自分 を表現し、自己をブランド化する女性たち」を考察。
第2章「もうすぐ妻に」
結婚を目的とするリアリティー・デート番組、花嫁たちが希望する美容や結婚式を得るために競う結婚コンペ番組、結婚式に向けたダイエット番組を通しメディアが求める妻像を考察。
第3章「主婦の復活」
フェミニスト研究者や歴史家が捉える主婦概念とその実践の変遷をたどりながら、主婦たちを主人公にしたドラマ番組を通し、主婦の文化的な舞台への再登場と主婦のブランド化、職業化を考察。
第4章「良き妻たち」
夫のスキャンダルで世間の注目を集めたヒラリー・クリントンなど実在の政治家の妻たちやゴシップの対象となり有名となった女性たちを、ドキュメンタリーやドラマ化した番組を通して考察。
〖感想〗
*たかが結婚されど結婚
本書を読む限りではあるが、このようなマスメディアに登場するアメリカ女性たちが積極的でエネルギッシュなことに、また、「結婚が衰退しつつある制度と考えられている」一方、結婚が相変わらずマスメディアの関心事であることに驚く。
*主婦の社会的な地位
本書では、主婦が家庭内で労働する伝統的な主婦からマスメディアに登場し職業化している主婦へと変わったことを述べているが、それで主婦の社会的な地位は向上したのだろうか。
印象的なのは最終章の「妻は女性であり、女性はジェンダーという事実そのものによって不利な立場に置かれたままなのである。(中略)大衆文化は妻を、権利を奪われた集団の一員としての地位から完全に開放することはないだろう。」である。客観的に述べているものの、この著述に著者の考えが示されているように思われる。
*出会いの変化
学歴格差と経済格差が結婚を望めない人たちの存在を生み出し、結婚率の低下に影響していることは本書で述べられている。アメリカでは2004年からフェイスブック、2006年からツイッター(現ⅹ)が開始。これらソーシャルネットワークの普及は、一般の人々がオンラインデートや出会い系アプリなどを利用するハードルを下げているようだ。日本でも、その利用は珍しいことではなくなり、実際にマッチングアプリで結婚相手を見つけた人たちも周りにいる。人から人への紹介からインターネットメディアによる紹介へという出会いの変化は、今後、結婚観や結婚率に影響して行くのだろうか。
◆書誌データ
書名 :21世紀の結婚ビジネス アメリカメディア文化と「妻業」
著者 :スザンヌ・レオナード著
訳者 :河野貴代美・但馬みほ
頁数 :270頁
刊行日:2024/3/13
出版社:三一書房
定価 :2530円(税込)
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
脱原発
女性政策
憲法・平和
高齢社会
子育て・教育
性表現
LGBT
最終講義
博士論文
研究助成・公募
アート情報
女性運動・グループ
フェミニストカウンセリング
弁護士
女性センター
セレクトニュース
マスコミが騒がないニュース
女の本屋
ブックトーク
シネマラウンジ
ミニコミ図書館
エッセイ
WAN基金
お助け情報
WANマーケット
女と政治をつなぐ
Worldwide WAN
わいわいWAN
女性学講座
上野研究室
原発ゼロの道
動画






