2012.05.24 Thu
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映画、『カラー・パープル』や『ロング・ウォーク・ホーム』などをみていて、いつも不思議に思っていたことがある。家庭で身の回りの世話をしてくれる黒人たちに対して、白人家族たちはどんな思いを抱いていたのだろう、ということだ。とくに、毎日の食事にいたっては、わたしの体内に入ってくるモノであり、料理を食することを通じて、絶大なる信頼だけでなく、その味への愛着を生み、さらには、その食事を作ってくれる人への敬意さえ生まれてこないか、思うからだ。
本書の舞台は、合衆国で公民権運動がピークを迎える60年代前半の、もっとも黒人差別がきつかったミシシッピ州のジャクソン。
幼い頃から、ヘルプと呼ばれる黒人女性に育てられ、生きるための大切な言葉をかけてもらい、励まされた記憶とともに成人した白人女性のユージニア(愛称、スキーター)が、同じように育ったはずの友人たちとの違和の中で、ヘルプの声を聞きたいと願いだすことから、物語は始まる。
しかし、暴力的な差別のなかで生きる黒人たちにとって、彼女たちが白人家庭で見ていること、そして、感じていることを、裕福な白人であるスキーターに語ることは、命がけである。しかも、インタビューをし始めたスキーターには、自分がやろうとしていることの深刻さを、感じることができない。
物語は、ヘルプである黒人女性たちの語りと、スキーターの語りを往復することで、彼女たちの隔たり、通じ合えなさが、鮮やかに描かれる。しかしこの、深い溝は、当時の合衆国における黒人差別が作り出したものである。ヘルプに、心の中にあることを語らせることによって、だんだんとその溝が埋まっていく。それは、白人たち自身が、黒人たちにみられていることに気づき始めるという、痛みを伴う自己覚醒のプロセスでもある。
本書の重要なエピソードの一つに、家庭内のトイレを、家族用とヘルプ用へと分けるようとする推進運動がある。この扱いに、怒りを爆発させながらも、白人たちの前ではお礼を言わざるを得ないヘルプは、それでも、心から憎み軽蔑する女性の娘には、この上ない愛情を注ぐのだ。そして、「優しい心を持つことや、自分を愛おしむことを、人を愛することを教えてやれますように」と祈りさえする。
ヘルプの祈りは、届いたのだろうか。
上下二巻だが、いくつかの謎ときを物語に絡めながらストーリが展開していく本書は、最後まで一気に読めること間違いなしの小説です。(moomin)
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