実践と研究をつなぐ教育11月号 No.946(2024年10月)
特集1「学校の『男性性』を問う」
特集2「先生が学校を休むとき」

教育11月号の特集1は「学校の『男性性』を問う」です。学校が子どもにとっても教師にとっても包摂的であること、子どもや教師の命やからだを大切にすることを妨げているのは何かを問うています。本特集の執筆者は、その答えは学校が内包する「男性性」であるという認識を共有しています。学校が内包する「男性性」の内実は、日本社会においてはこれまでのところずっと、「暴力」を許容し、子どもを統制し、卓越することを志向させ、競争させ、社会を分断させるようなものであり続けてきました。

本特集では、教室内での「規範」を確立し「秩序」を維持するために、先生たち自身が「男性性」を実践せざるを得ないこと、そのことが自分自身をも傷つけてきたことを内省しています。小学校の教室で再生産される性別役割分担にどのように働きかけられるのかをめぐる先生のさまざまな葛藤を吐露しています。男子校で強く働く「男らしさ」の呪縛から生徒たちを解放する教育実践を模索したり、ホモソーシャルな秩序に生徒を組み込みその価値を内面化させている男子校において女性であり教員であることが何を意味するのか検討しています。男子校で特権者の立場から言動する生徒によって「傷」を負わされながらも、生徒たちがちゃんと自分の感情を言葉にできるような教室を生みだそうとする実践を記録しています。「異性装」を特殊な教育実践であり慎重さや説明を求めるものとして位置付けるマジョリティの見解に対して異議申し立てをしています。

本特集の執筆者が、「学校の『男性性』を問う」のにあたって共通に認識しているのが「フェミニズム」の視点の必要性です。「フェミニズム」は、「暴力」を土台とする「男性性」とは異なるどのような「男性性」を提示できるでしょうか。各論考が示唆する学校の異なるビジョンをぜひお読みください。

特集2は「先生が学校を休むとき」です。過重労働や教員不足が問題となっている中、改めて教員の休む権利について問う特集です。パワハラを許し、人間としてのからだを不可視化する職場としての学校の問題は、特集1が問う学校の「男性性」とも無関係ではありません。こちらもぜひお読みいただきたいです。

<目次>
特集1 学校の「男性性」を問う
男性性と教員の「暴力」 ●前川直哉
「男性性」の“くびき”をまなざす ●大江未知
教室の風景をフェミニズムの視点から眺める ●星野俊樹
男子の聖域 ●福島はなこ
男子校でこそ感情の言語化を ●田中めぐみ
トラブルとしての異性装 ●菅野真文
フェミニズムから男性性を問うことはできるか ●虎岩朋加

特集2 先生が学校を休むとき
教員の病気休職等の調査結果から見える問題 ●保坂 亨
思わぬ休職 ●立川 明
自分らしく働き、休めたら ●桜井夏美
夫・父・教師としての育休 ●國貞圭佑
仕事を休んで学び直すこと ●塩田奈津
教員の休む権利と定数改善 ●中嶋哲彦

連載
<子どもの風景>「ただいま」から始まる放課後 ●松本里美
<ちいさな教材・教具たち>フロアバレーボールの世界へ ●北嶋晃吉
<「学校メガネ」をはずしてみたら?>トイレって悩ましい ●小平 肇
<円窓より──ジェンダーのまなざし>学校生活で「同意」を学ぶ ●柳 富代
<毎日がチャレンジ!>秘密の手紙 ●松田絢音
<教育情報>学術会議「法人化」の罠──教育者は無関心でよいのか ●小寺隆幸
<映画評>『若き見知らぬ者たち』 ●谷口裕一
<書評>
加用文男さんのあそび論を語る会編集
『ゆかいなゆかいな仲間たちと──保育運動と共に歩んだあそび研究者:追悼加用文男さん』 ●加茂 勇
全国民主主義教育研究会編
『社会とつながる探究学習──生徒とともに考える22のテーマ』 ●髙橋真太郎
<私の誌面批評>勇気をもらえる特集 ●川地亜弥子
教育の言葉 ●中村(新井)清二

『教育』読者の会
教科研常任委員会だより
教育月報高津芳則
編集後記

実践と研究をつなぐ教育11月号 No.946(2024年10月)旬報社
出版年月日 2024/10/10
雑誌コード 1295511
判型・ページ数 A5・112ページ
定価 990円(税込)
https://www.junposha.com/book/b654191.html