27日開票の衆議院議員選挙の結果を見ていて、久しぶりに平家物語の冒頭の句を思い出しました。
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり、
盛者必衰の理をあらはす、おごれる人は久しからず
ただ春の夜の夢のごとし
自民1強のおごれるものはやはり久しからずでした。自民公明あわせても、過半数にはるかに及びませんでした。森友学園も加計学園もうやむや、統一教会との癒着も解明されず、もやもやした中で裏金を何千万も懐にしていた議員が当選する方がおかしいのです。
自民の大敗と立憲の躍進という大きな見出しの隅の方に、女性73人当選で過去最高だと、女性議員が増えたことを伝える記事も見えます。73人は過去最高の54人より大きく上回っていて、結構なことです。でも全体の議員数の15.7%にすぎません。たった15.7%なんです。
前回の衆院選挙の結果は10.3%でしたから、5.4%あがってよかったのは確かですが、インターネットで「女性議員比率の国際比較順位」を調べてみますと、今まで186国中164位だったのが139位に上がることになります。そのひとつ上の138位は16.4%のロシアです。164位から139位に上がっても、たいして嬉しくないでしょう?
なにしろ、50%のニュージーランドが5位、スウェ―デン46.4%で9位、フランス37.8%で35位、イギリス39.5%で48位、アメリカ29.4%で64位と、そして、中国24.9%で95位と、おなじみの国々は低くても100番以内にみんな入っています。ほんとに情けない!!
https://www.gender.go.jp/policy/positive_act/pdf/sankou2_23_09.pdf
せめて100番以内に入りたい、いや、せめて186か国の半数の90番あたりに入りたい、とすると、女性比率が26%以上でなければなりません。日本の衆議院の定数が465ですから、その26%というと、121人です。そこまでいってやっと、世界の半数以内に入れることになります。73人で喜んではいられないのです。
さて、今回の選挙で選ばれた女性議員73人はどういう政党に属しているか、どの地域から選ばれてきたのか、国内の事情を見てみましょう。まず政党別に見ると、次の表のようになります。(朝日新聞2024/10/29)
先の国際比較順位で、世界の186か国の半数以内に入るには女性比率が26%以上でなければならないとみてきましたが、この表で26%以上の政党は、れいわ新選組・共産党・参政党・保守党の5政党です。いずれも当選者数10人以下の小さい政党です。候補者数や当選者数が少し動いただけで女性比率も大きく変動します。たとえば、社民党は当選者1人で女性比率は0%ですが、もしもこの1人の当選者が女性であったら100%ということになります。ですから、大きい政党の女性比率が高くならないと安定した女性の力にはなりません。まず自民党の9.9%という1桁の比率は何とも困ります。一番大きな政党の女性が1割にも満たないということでは、女性の声はほんのわずかしか反映されないことになります。至急2桁にあげる努力をしてほしいです。
次に、地域別に女性比率を見ていきましょう。各地域の定数と女性男性の当選者数、女性比率を、北海道から九州への順で表にしてみます。
地域 定数 女性当選者 男性当選者 女性比率
北海道 20 6 14 30.0%
東北 33 7 26 21.2%
北関東 52 7 45 13.5%
南関東 59 10 49 16.9%
北陸信越 28 3 25 10.7%
東京 49 13 36 26.5%
東海 54 9 45 16.7%
近畿 73 11 62 15.1%
中国 7 1 26 3.7%
四国 16 1 15 6.3%
九州沖縄 54 5 49 9.3%
計 465 73 392
ここでも女性比率26%以上という地域を探すと、北海道と東京だけです。それに続くのは南関東と東海地方です。九州沖縄・四国・中国地方は1桁、つまり1割にも満たないのです。中でも中国地方と四国地方はわずかに1人しか当選者がいないのです。これではこの地方の声は男性の声ばかりになってしまいます。
過去最高の女性当選者が出た今回の衆議院選挙でしたが、世界の趨勢からみると、そして少しその数字の中に入ってみると、まだまだ喜ぶには程遠い実情がわかってきます。この少しだけ嬉しい73の数字を、せめて世界の半分に中に入れる121に近づけるようように、もっと頑張るきっかけにしたいと思います。