
「ジェンダー面倒くさい」「もうお腹いっぱい」ってなってる男性たちにこそ読んで欲しい!
ひとりの青年が、とまどい、ゆらぎ、つまずきながら、夫になり、父になる成長物語。その率直さに胸を衝かれる。男性が本書から学ぶことは多いだろう。——上野千鶴子
このひとの書くものはブレない。それはたぶん、自分の立ち位置と付与された力を厳しすぎるくらいに点検することを忘れないからだ。——信田さよ子
今まさにメディアや芸能界が揺れに揺れていますが、性差別的な価値観や構造的な特権、無自覚のハラスメントやホモソーシャルな人間関係など、「#MeToo」ムーブメント以降ますます切実さが増す男性性の諸問題について、マジョリティ男性の当事者として向き合ったエッセイ集を出版しました。2020年に出版した『さよなら、俺たち』の続編的な位置づけですが、この5年で男性性をめぐる議論のあり方はいろいろと変化してきたように感じます。
内省や反省はもちろん大事だけど、構造の問題も同時に考えていく必要がある。すべて自己責任に帰してしまうのは苦しいけど、かと言って「社会のせいだ」と開き直ることはできない。ジェンダーを男女二元論で語るのは乱暴だけど、「男性」という括りで捉えてみないと見えてこない問題も確実にある……。特権と圧力、加害者性と被害者性、マジョリティ性とマイノリティ性、フェミニズムやシスターフッド、家父長制に資本主義など、いろんなものが複雑に絡み合う状況のなかで自分のあり方を模索していかねばならないのが、現代を生きる男性たちの現在地ではないでしょうか。
第1章では『さよなら、俺たち』のスタンスを引き継ぎ、内省的な視点で男性性の問題と向き合い、第2章は男性優位な社会構造を視野に入れた上で、大人としての責任について考える内容となっています。第3章では傷やトラウマに着目し、被害性と加害性の両面から男性性について考察し、そこから視野を社会に広げ、平成の時代に広がった新自由主義的な価値観について眺めたのが第4章です。続く第5章では、家族や結婚について書かれた原稿が並び、そこから浮かび上がる「家父長制」というラスボスの輪郭を描写しました。そして、ここまでの議論を受け、男性たちのこれからについて模索したのが第6章です。
以下、本書のまえがきより引用します。
〈ジェンダーとは生き方や在り方に直結する問題で、私たちの言動や感受性のOS(オペレーション・システム)として機能しているものだ。そこに変化を加えようとすれば、当然ながらいろんなところがギリギリ軋む。そのストレスや不快感はバカにならず、反動的なエネルギーが生じたって不思議ではない。だからこそ思う。俺たちは頭で考えてるだけでは変われない。そのためには何かに圧倒され、言葉を失い、放心状態になるような体験を重ねることが重要で、内省も責任も、ケアも覚悟も、抵抗も希望も、きっとそういう時間から生まれるはずだ。もちろん本やドラマだけじゃない。恋愛にも、子育てにも、仕事にも、旅にも、生活にも、友達とのお茶にも、そんな感動は宿っている。「昔のほうがよかった」「ずいぶん息苦しい時代になった」「あの頃に帰りたい」って気持ちは誰の中にもあると思うけど、進んでしまった時間を、変化してしまったものを、元に戻すことはもうできない。それでも毎日は続くし、何かに心を震わせながら生きていくことは全然できる。さよならした時間に戻ることはできないけれど、俺たちはこれからも生きるのだ。〉
ここ数年、男性たちから「ジェンダー面倒くさい」「もうお腹いっぱい」という声をよく聞くようになりましたが、そんな人にこそ読んで欲しい一冊です。どうぞよろしくお願いいたします。
◆目次
1 〈男〉とフェミニズム──シスターフッドの外側で
2 我は、おじさん──男性優位社会と中年世代の責任
3 被害と加害と恥と傷──泣いてる〈俺〉を抱きしめて
4 平成から遠く離れて──生産性の呪いと自己責任社会
5 家父長制への抵抗──結婚と家族、ジェンダーの呪縛
6 これからの〈俺たち〉へ──beingの肯定
◆書誌データ
書名 :戻れないけど、生きるのだ 男らしさのゆくえ
著者 :清田隆之
頁数 :304頁
刊行日:2024/12/24
出版社:太田出版
定価 :1900円(+税)
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
脱原発
女性政策
憲法・平和
高齢社会
子育て・教育
性表現
LGBT
最終講義
博士論文
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