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『農業を買い支える仕組み--フェア・トレードと産消提携』 辻村英之 

2013.07.29 Mon

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.タンザニアのキリマンジャロ山腹にあるルカニ村、著者の辻村英之さんは、15年にわたって村の農業経営調査を行う一方、特産品であるキリマンジャロ・コーヒーのフェア・トレード運動を推進してきました。前著『おいしいコーヒーの経済論――「キリマンジャロ」の苦い真実』は、その成果で好評を博しました。

 新著の『農業を買い支える仕組み』は、国家間の交易を対象にしたフェア・トレード研究の枠組みを、国内の農産物にも適用し、世界的に衰退しつつある農業の小経営者たちを支える仕組みを提起する意欲作です。

 生活クラブ生協や関西よつ葉連絡会・使い捨て時代を考える会など、都市消費者の力を集めて小規模農業者との連携を作る運動は、産消提携(産直)として知られています。辻村さんは、そうした産消提携の枠組みが、フェア・トレード運動と同質のものであり、むしろ、世界最先端を切り開くものであることを指摘しています。

 生活クラブ生協と山形県遊佐町の農業者たちが生み出した共同開発米の現場を調査するなかで、消費者と生産者の対立・葛藤・交流の積み重ねが、都市住民と農業者との結びつきを強め、農業が持続する回路を保障するものであることを解明していきます。消費者団体の主要な担い手が女性たちであることは言うまでもないでしょう。

 消費者が何をいくらで買うのか、という日々の何気ない活動が、農業・農村の持続に関わることであることを例示し、辻村さんは具体的方策を提示しています。TPP反対の運動は、私たちの消費の行動に深く関係していることを示唆しています。

(編集 高瀬幸途)

=目次=

はじめに――「国内フェア・トレード」としての産消提携

第1部 国際フェア・トレードと産消提携

第1章 フェア・トレードの価格形成と役割

第2章 多様化するフェア・トレードの現状と課題――フェア・トレードの論点①

第3章 フェア・トレードの普及を考える――フェア・トレードの論点②

第4章 大手企業の倫理的調達・CSRにおけるフェア・トレードの位置――コーヒー産業を事例として

第5章 提携型フェア・トレードにみる倫理観・理念の連鎖――「キリマンジャロ・ルカニアラビカ」コーヒーを事例として

第6章 フェア・トレードにおける産消交流の意義

第2部 国内フェア・トレードと産消提携

第1章 米の価格形成制度と「ライスショック」

第2章 京都・綾部米の価格形成と生協産直の課題――「顔の見える関係」から産消提携・「国内フェア・トレード」へ

第3章 遊佐町農協と生活クラブ生協の産消提携の発展――生産者と消費者の支え合いの進化と倫理観・理念の重ね方

第4章 遊佐町農協と生活クラブ生協の産消提携の度合――買い支えの仕組みと提携指標

第5章 産消提携型取引のモノサシ――産直から産消提携へ

  提携型取引のモノサシにおける生活クラブ生協の買い支え(共同開発米事業)の位置  /提携型取引のモノサシと有機農産物の産消提携運動(熊本いのちと土を考える会・使い捨て時代を考える会)/提携型取引のモノサシと生協(京都生協・コープしが)

おわりに――「公正な価格」とは

著者紹介

辻村英之……つじむら・ひでゆき

京都大学大学院農学研究科准教授(農業組織経営学専攻)

農学博士(農林経済学)

主な著書に、『コーヒーと南北問題』、『南部アフリカの農村協同組合』(いずれも日本経済評論社)、『増補版 おいしいコーヒーの経済論 「キリマンジャロ」の苦い真実』(太田出版)。主な訳書に、『コーヒー学のすすめ』(世界思想社)。








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タグ: / フェア・トレード / 消費 / 運動