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女性政策の矛盾の在り処 『婦人保護施設と売春・貧困・DV問題』須藤八千代・宮本節子

2013.09.17 Tue

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. いまどれだけのひとが、日本に49あるという婦人保護施設について知っているでしょうか。そういうわたしも、本書を読むまで、その施設の存在すらしりませんでした。編者の一人、須藤八千代さんがおっしゃるには、このいかにも古めかしい「婦人保護」というのは、その名称の古めかしさもさることながら、ジェンダー・バイアス、性規範に縛られ、具体的な生活を送る女性たちの生/ 性を捻じ曲げるように働きがちです。

本書を読むと、日本社会における女性がいかに、生殖機能をもった母としての役割と、男性の快楽に寄与すべき性の道具として分断されているかを強烈に思い知らされます。おそらく、多くの女性たちにとって、あまりなじみのない「婦人保護」施設という、社会から「保護」されなければ生きていけないと考えられてしまう女性たちが集まる場だからこそ、そのことが一層顕著になるのでしょう。

「売春・貧困・DV 問題」というタイトルからも推察されるように、困難な生を生きざるを得ない女性たちを取り巻く環境に暗然たる気持ちにもなります。ただ、本書の執筆者たちがそうした女性たちと共に生き、学び、言葉をこうして紡いでいることに、希望の光も見えてくる、そうしたこれまであまりなかった、女性政策に関する書物の極北ともいえる本だと思います。セックス・ワーク論はじめ、社会の矛盾を象徴するかのように錯綜した問題を考えるさいに、是非ともまず読んでおくべき論文集です。(moomin)

以下は、各章のタイトルと執筆者を記しておきます。

第一章 社会福祉施設としての婦人保護施設の現実 宮本節子

第二章 差別、貧困、暴力被害、性の当事者性 宮本節子

第三章 「かにた物語」--空前絶後の成功と失敗 須藤八千代

第四章 婦人保護施設で働く「ひと」--田口道子と横田千代子 須藤八千代

第五章 人は変われる--東京・いこいの家から: 障がい者施設の活用を中心に 相楽友

第六章 婦人保護施設の今--大阪府立女性自立支援センターからの報告 河野ひとみ

第七章 貧困の広がりと婦人保護施設の役割--増加する女性ホームレスの入所とその背景 丸山里美

第八章 人身取引被害者と日本社会--送り出し国と受け入れ国を結ぶもの 島崎裕子

第九章 女性の保護空間の再創造に向けた一考察--駆込寺、シェルター、婦人保護施設を手がかりに 桑島薫








カテゴリー:わたしのイチオシ / moomin

タグ:貧困・福祉 / DV・性暴力・ハラスメント / 女性政策 /