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研究者も医師も支援職も大切なことは一緒なのかも 鷹番みさご
2014.05.28 Wed
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.ジャーナリズムもアカデミズムも、取材や調査の対象となっている人とどう向き合い、相手が語ってくれたこと/語らなかったことをどう理解して、どう表現していくのか。そのプロセスに人間としてのあり方が問われる。
あかたけさんのエッセイを読んでいてそんなことを考えた。
あかたけさんは、大学教員を辞め、老人ホームでの利用者との対話から紡がれた六車由美さんの『驚きの介護民俗学』を紹介してくださったが、アカデミズムにおける対象との向き合い方を考える際には、文化人類学者である波平恵美子さんと小田博志さんの『質的研究の方法』が示唆深い。 この本の中では、インタビューデータを何度も読み直し、読み込むことによって意味の多重性や文脈が発見されるということが繰り返し述べられている。 インタビューを直接聞き、インタビューのテープ起こしをしたからといって、そのインタビューの内容について「完全に理解した」状態になることなどなく、それ以前の自分では思いもよらなかった発見は起こりうるのだ。これは、一見当たり前のことのように聞こえるが、人間はともすると簡単に対象を「わかった」と思いこんでしまい、「わかっていないかもしれない」「新しい発見があるかもしれない」と思いながらデータを読むという行為をつづけることは実はなかなか難しいことである。
また、波平さんが調査地を繰り返し訪れて、「よそ者」から「娘分」として受け入れられるようになったというエピソードからは、調査をする自分の都合や論理で相手とつきあうのではなく、相手の都合や論理に沿いながらつきあいを重ねていくことの重要性をひしひしと感じた。
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.精神科医の中井久夫さんは『こんなとき私はどうしてきたか』で、医療の場での患者との向き合い方を語っている。中井さんの「私たちはつい『痛いところから触れる』間違いをおかしがち」「世間通用の言葉でなくて、自前の言葉で常識で受け入れられるように話すこと」という言葉などからは、相手を「患者」として扱う前に、まず尊厳をもった「人間」として向き合ってきたであろう医師としての姿勢が感じられる。そして、そのような姿勢は、波平さんが調査で出会ってきた人たちとどう向き合ってきたかということと通じるものがあるように思う。
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.依存や被害経験をもつ女性の支援に携わる上岡陽江さんと大嶋栄子さんが『その後の不自由』のなかで、自分の体験してきた依存や被害経験を受け止めつつ、「その後の不自由」をどのように生きているか/生きていけるかを考察している。そこで書かれているのは、「普通の生活」を送れるよう手助けすること、回復途上にあるときの「焦りの時間」を支えることなどといった、成果が目に見えづらく時間がかかるかかわりがいかに人が回復していくプロセスに重要であるかということだ。支援者本位ではすすまない支援現場のなかでは、支援する相手の生活世界をいかに理解し、支えるかがカギとなるのだ。
ちなみに、ここで紹介した3冊で偶然にも共通して指摘されていることがある。それは、最初に話をさせすぎない/話を聞きすぎないことである。他者を尊重し、他者と自己との境界を侵すことなく関係を形成することは、どのような職種でも、どのような場所でも共通すること。ただ1回の邂逅だからこそ語れる話も時にはあるだろうが、そのような機会はそうそうない。研究であろうが治療であろうが支援であろうが、相手の経験を外部に曝させることは暴力と表裏一体だ。その暴力性や危うさは、他者を「理解」することの難しさをとことん味わった人たちが共通して実感することなのだろう。
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大事なことは、自分のタイプやスタンスを理解した上で、いかにして自分の持ち場で自分なりの他者との向き合い方を見つけていくかということなのではないだろうか。そして、それは、研究者とか医師とか支援職とか、そういった「仕事」の上の話だけでなく、人として生きているあらゆる場面についていえるのではないだろうか。
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