2014.08.13 Wed
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.「大きくなったら何になる? キュリー夫人みたいになりたい。どれだけの女の子たちがそう言ってきたことだろう。なのに、〈悪魔の光線〉を発見したこの破天荒な女性の、科学に仕えた無私の生涯について、わたしたちはいったい何を知っているだろうか。本書で彼女に対する敬愛はますます深まるだろう」上野千鶴子
今年は、キュリ―夫人没後八〇年にあたる。女性初のノーベル賞受賞者、しかも二度! またパリ大学初の女性教授職。祖国ポーランドを離れて、外国でこれだけの偉業を成し遂げた科学者は、一体どんなスーパーウーマンかと思うが、これらの栄光を手にした後も彼女の文章はひじょうに慎ましい。一心に繭を作る蚕に感動した彼女はこう綴る。
わたしもいつも、ひとつの目標にしんぼう強くむかっています。そこに真実があるという確信は、少しも持てないまま。(…)どうかわたしたちが、それぞれに自分の繭を紡いでいくことができますように。「なぜ」とか「なんのために」などと、問うことなく。(姪への手紙より)
キュリー夫人の次女エ―ヴが書いたこの伝記の読みどころのひとつに、豊富に引用されたマリーの日記や、家族・友人・未来の夫ピエールとの書簡がある。本書は長年読みつがれたロングセラーであるが、『星の王子さま』『悲しみよこんにちは』などの名作の新訳でも定評のある河野万里子氏によって一新されたみずみずしい訳文によって、ポーランド脱出、自由の国フランスでの学生生活、ピエールとの出会い、育児と研究の両立に悪戦苦闘する日々などを通し、情熱の人マリーの息遣いが百年の時を超えて実に生き生きと聞こえてくる。
放射線が、がん治療に役立つと信じながら、長年続けた実験によって自らも被爆し命を縮めたキュリー夫人。特許も取っていなかった。彼女がフクシマのことを知ったらどれほど嘆くことだろう。いま、私たちがキュリー夫人の人生から学ぶべきことは、あまりに多いのではないだろうか。(編集者 鈴木美登里)
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