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宝塚市議会で2008年に可決された意見書は以下の通り。
日本軍「慰安婦」問題に対して、政府の誠実な対応を求める意見書
2007年7月30日、アメリカ下院議会は全会一致で、「日本軍が女性を強制的に性奴隷にした」ことを「公式に認め」「謝罪する」よう日本政府に求める決議を採択しました。
当時の安部晋三首相は7月31日、この決議採択を「残念なことだ」と評し、生存する犠牲者に日本政府は公式謝罪しないことを強くほのめかしました。これは、1993年の河野洋平官房長官の談話と矛盾する態度です。このような態度をとっていては、これまでに日本政府が口にしてきた「謝罪」が、本心とかけ離れた、口先だけのものであると受け取られても仕方ありません。
また、村山首相のお詫びの手紙と共に一部の被害者に届けられた「女性のためのアジア平和国民基金」は、国際社会の批判をかわすための欺瞞であったのではないかと言われても仕方ないでしょう。日本政府に謝罪と賠償、歴史教育などを求める決議案は、アメリカの議会決議に続いて、11月にオランダとカナダで、12月13日にはヨーロッパ議会で、採択されました。
日本政府が、日本軍「慰安婦」の被害にあった女性達に対して、いまだに公式の謝罪もせず、補償もせず、真相究明や責任者処罰をしないばかりか、教科書からもその記述を消し去って、無かったことにしようとしていることに対して、世界各国で批判の声が高まっているのです。 今、世界中で、日本軍「慰安婦」問題を解決するための運動が広がりを見せています。しかし、これらの世界の動きは日本では必ずしも十分に報道されていません。
政府においては、1993年の河野洋平官房長官の談話の上、さらに日本軍「慰安婦」問題の真相究明を行い、被害者の尊厳回復に努め誠実な対応をされるよう求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
議会には2つの決議案が付託された。
決議案第15号「いわゆる従軍慰安婦問題に関して、本市議会が平成20年3月26日付けで政府に提出した意見書が決定的な根拠を失ったことを確認するとともに、国はさらなる真相の究明を進め、諸外国、関係諸機関に、慰安婦問題についての正しい理解を促す努力をするよう求める」
決議案第16号「いわゆる従軍慰安婦問題に関して、国はさらなる真相の究明を進め、諸外国、関係諸機関に、正しい理解を促す努力をするよう求める」
討論要旨
☆15号への賛成
山本敬子(自民党=宝結会)
「従軍慰安婦とは、国際的バッシングにより左傾化する時代にあって韓国側から提起された問題。軍隊の慰安所は日本のみならず世界的にみられるもの。にも関わらず、日本が殊更に責められたのは強制的に連行したとされたからです。ところがそれは吉田清治氏の虚偽証言により造られたイメージでした。朝日新聞は20年にわたりこの誤報を撤回してこなかった。その結果として米下院議会の決議や国連のクマスワラミ報告にも吉田氏の証言により、日本軍が女性を強制連行して性奴隷にしたという誤った認識が記載されることとなったのです。朝日新聞の謝罪会見後も、米国の慰安婦像は撤去されておらず、日本人児童が『日本人は悪いやつ』といじめにあっているのです。こうして毀損された日本人の名誉を回復するためにも、宝塚市議会の先の意見書はその決定的根拠を失ったということを明らかにしなければなりません」
大河内茂太(新風宝塚改革の会)
「宝塚市議会の意見書は想像を超える影響力を持った。韓国でも従軍慰安婦への補償を求める決議の根拠として引用され、米国の記念碑の碑文にも記載されている。真実でないものを真実として伝えてしまっている。いま、従軍慰安府問題は戦時中の女性の人権問題として扱われ、わが国が批判の矢面に立たされている。その一助を担った意見書は地方自治体の役割を超えている。論拠として政治利用されていることは誠に遺憾であり、速やかな撤回を求める」
大川博之(太誠会)
「宝塚市議会の意見書が冒頭にひいているアメリカ下院議会の決議は、日本軍による従軍慰安婦は残虐性と規模において20世紀最大の人身売買と位置づけている。このイメージは吉田証言によってつくられたものである。その後、アメリカでも、日本でも、政府レベルでここまでの過激な認定はなされていないにも関わらず、宝塚市議会が率先してその認識を支持したかのようになっているのは問題だ。『性奴隷』という表現についても今年6月、日本政府としてその言葉を用いないようにと国連に要望している。私としては意見書が根拠を失ったことを確認すべきと考える。慰安婦は性奴隷であるという理解を打ち消した上で、今後の議論に臨むべきだ」
☆16号への賛成
井上きよし(ユニットF宝塚)
「宝塚市議会の意見書は吉田証言を根拠としておらず、河野談話を唯一の根拠として作成された。そして河野談話の作成にあたっては、現在開会中の国会でも明らかになっているように、吉田証言を根拠としていない。また安倍首相自ら『河野談話の立場を踏襲する』と明言している。以上の事実から本市議会の意見書の根拠はいささかも揺らいでおらず、15号が掲げる『決定的な根拠を失ったことを確認する』というのは意味をなさない」
草野義雄(共産党)
「山本議員の議論は加害者と被害者をすり替えている。吉田証言は慰安婦を強制的に働かせていたという事実の唯一の証拠ではない。意見書の根拠は河野談話であり、吉田証言はなんら根拠にはしていない。なのに、決定的な根拠を失ったと明記するのは、理屈が通らない。朝日の誤報をもって、慰安婦の強制性を否定する議論は国際社会には通用しない。女性の強制使役の実態に対し、7つの国・地域から日本政府に対する議決が上げられている。吉田証言は全体の一部であって、中心問題を否定する根拠とするには足らない」
採決では15号への賛成は14人、16号への賛成は11人で、15号が可決され、16号が否決されました。
15号に賛成したのは、「宝結会(自民)」、公明、「新風宝塚改革の会」の各会派。
16号に賛成したのは共産党、「ユニットF宝塚」の各会派と無所属議員。
「もとの意見書を採択した時の議論では、唯一河野談話が出てくるが吉田証言には触れられていない。それは当時の本市議会で、人権問題として受け取ってその趣旨を採択されたためである。そのこととは裏腹に、今、従軍慰安婦問題に関して宝塚市議会の名前が挙がる。朝日新聞が吉田証言を虚偽として取り消した途端、本市にも多くの意見が寄せられている。そういった状況の中で、本市議会としてはあの意見書はそんなつもりで出したんじゃないということを明らかにすべき」
市議会事務局によると、8月25日~10月3日まで事務局に寄せられた抗議メールは138通。その大半が、「意見書を撤回せよ」というなでしこアクションなどの呼びかけに従った組織的なもので、「意見書は撤回できない。意見書と決議は違う」という地方議会運営についての基本的な認識を欠いたものだった。また、委員らはChangeでの撤回を求めるキャンペーンに3164通の賛成署名があったことも、理由に挙げている。
宝塚市議会の意見書を否定する決議は、いわゆる「ネトウヨ」の組織票で、簡単に地方議会の意見書が覆せるのだという先例に道を拓いた結果になった。そのことを最も重く受け止めた。
傍聴していた女性が「私はノンポリで従軍慰安婦問題についても詳しくない。だけど、こんなにも理屈が通らない議会をみて、おかしいと思い、怖くなった」と話していたのが印象的だった。